肝炎ウイルス検査。一度は受けておきたい理由
肝炎ウイルス検査は、一度受けておけばその時点までの感染の有無がわかる血液検査です。ところが、症状がないために受けていない方が多い検査でもあります。ここでは、厚生労働省と日本肝臓学会の公表資料にもとづいて、なぜ一度は受けておきたいのかを整理します。
まず結論:全ての国民が、少なくとも一回
厚生労働省は肝炎総合対策のページで、「全ての国民が、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検する必要がある」としています。あわせて「できる限り早期に受検するとともに、その結果を認識し、検査結果に応じた受診等の行動につながるようにすることが重要」とされています。
- 検査は採血のみで、B型とC型の両方を同時に調べられます
- 症状がないうちに調べておくことに意味がある検査です
- 結果を受け取るだけでなく、陽性の場合に受診につなげることが大切とされています
肝臓は症状が出にくい臓器
日本肝臓学会の市民向け冊子では、肝臓について「病気でその働きが損なわれても,症状が現れにくく『沈黙の臓器』などと呼ばれています」と説明されています。感染していても長い間気づかれないことがあります。
同冊子では、慢性肝炎が続いた場合の経過について「慢性肝炎が持続すると,肝細胞が壊れた跡に線維が沈着し,肝臓が硬くなります」「肝線維化が進むにつれて,肝がんを発生しやすくなります」と説明されています。症状がないことは、進んでいないことの証明にはなりません。
B型肝炎ウイルスはどう感染するか
B型肝炎ウイルス(HBV)は、日本肝臓学会の資料で「HBVの含まれる血液や体液が我々の体内に入ることにより起こります」とされています。市民向け冊子では、感染の機会として次のものが挙げられています。
- 出生時の母子感染
- 父子感染など家族内感染
- キャリア(持続感染している方)との性交渉
- 剃刀や歯ブラシの共用
- 覚せい剤、麻薬の注射
同学会は、大人へのHBVの感染は感染したパートナーとの性交渉の際に起きることが一般的としており、日本には約100万人のキャリアがいると記載されています。日常生活で食器を共有する、入浴するといった行為でうつるものではありません。
C型肝炎ウイルスはどう感染するか
C型肝炎ウイルス(HCV)は血液を介して感染します。日本肝臓学会の市民向け冊子では、感染の背景として「1990年以前の輸血,血液製剤の投与,注射針,注射器などの共用や不十分な消毒などの医療行為」が挙げられています。
つまり過去の医療行為が関わっていることが多く、心当たりがない方でも感染している可能性があります。
検査で何を調べるか
検査は採血で行います。日本肝臓学会の資料では、B型は「HBs抗原を測定し,これが陽性の場合には,体内にB型肝炎ウイルスが存在すると考えられます」、C型は「C型肝炎ウイルスの抗体検査を行い,陽性であればその感染を疑います」と説明されています。
| 対象 | 主な検査項目と意味 |
|---|---|
| B型肝炎 | HBs抗原。陽性の場合、体内にB型肝炎ウイルスが存在すると考えられます |
| C型肝炎 | HCV抗体。陽性の場合、C型肝炎ウイルスの感染を疑い、追加の検査で現在ウイルスがいるかを確認します |
C型のHCV抗体は、過去に感染して現在はウイルスがいない場合にも陽性になることがあります。そのため抗体が陽性であれば、現在ウイルスがいるかを確認する検査を追加します。結果の意味は自己判断せず、医療機関で説明を受けてください。
陽性だったときの流れと医療費助成
陽性であっても、すぐ重い病気だという意味ではありません。肝臓の状態を血液検査や超音波検査などで確認し、治療が必要かどうかを判断します。当院で行っている検査は検査・設備のページでご案内しています。
C型肝炎については、日本肝臓学会のC型肝炎治療ガイドライン(第8.4版・2025年4月)で、治療の目標が「肝発癌ならびに肝疾患関連死を抑止する」ことであり、そのために「HCVの排除を目指す」と示されています。同ガイドラインでは、飲み薬による治療について国内試験でのSVR率(ウイルスが排除された状態が続く割合)が99%と報告された薬剤が挙げられ、「すべてのC型肝炎症例に対して抗ウイルス治療を検討することを推奨する」とされています。
ただし、ガイドラインは「抗ウイルス治療によってHCVが排除された後でも、長期予後改善のため肝発癌に対するフォローアップを行う必要がある」としています。治療が終わっても定期的な確認を続けることが前提です。使う薬や治療期間は、ウイルスの型や肝臓の状態によって変わります。
費用については、厚生労働省がB型・C型肝炎の治療について、「患者の世帯所得に応じ、その自己負担限度月額を原則1万円(上位所得階層は2万円)に軽減します」とする医療費助成を案内しています。肝がん・重度肝硬変の治療についても、「治療3月目から患者さんの自己負担額が1万円となるよう助成が受けられます」とされています。これらの制度は改正されることがあります。最新の内容と申請方法は、茨城県または厚生労働省の公表資料でご確認ください。
検査を受けられる場所と当院でのご相談
厚生労働省は、肝炎ウイルス検査の詳細について「お住まいの地域の市町村や保健所にお問い合わせください」と案内しています。お電話でご確認ください実施の有無、対象年齢、費用、申込方法は自治体ごとに異なり、年度によって変わることがあります。
当院では、日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医である院長が診察を担当し、超音波検査を院内で実施しています。肝機能の数値を指摘された方のご相談も承っています。詳しくは胃腸科・内視鏡のページと健康診断のページをご覧ください。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。健診で肝臓の数値を指摘された方は脂肪肝。お酒を飲まない人にも起こる肝臓の変化もあわせてご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「肝炎総合対策の推進」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/index.html - 日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」(市民向け冊子)
https://www.jsh.or.jp/lib/files/citizens/booklet/understanding_liver_disease.pdf - 日本肝臓学会「B型肝炎、どのような病気?」(市民のみなさま)
https://www.jsh.or.jp/citizens/hbv/hepatitis_b/ - 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会「C型肝炎治療ガイドライン(第8.4版)2025年4月」
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/C_v8.4_202506.pdf - 国立がん研究センター がん情報サービス「肝細胞がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/index.html
いずれも本記事執筆時点で公表されている内容にもとづいています。ガイドラインや医療費助成などの制度は改正されることがありますので、最新の情報は厚生労働省・茨城県・各学会の公表資料でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。診断や治療の代わりになるものではなく、個々の症状・体質・服用中のお薬による判断は診察が必要です。検査結果の意味をご自身で判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。消化器・肝臓のご相談は胃腸科・内視鏡のページ、健診の結果でご相談の場合は健康診断のページもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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