甲状腺の病気。疲れやすさ・体重変化のサイン
「疲れやすい」「体重が変わった」「寒がりになった」。こうした変化は年齢や生活のせいと考えられがちですが、甲状腺ホルモンの過不足で説明できることがあります。甲状腺の病気は血液検査で確かめられるのが特徴です。
まず結論:疲れやすさが続くなら、血液検査で確かめられる
甲状腺ホルモンは全身の代謝に関わるため、過不足が起きると心身のさまざまな部分に影響が出ます。症状だけでは他の原因と区別しにくい一方で、血液検査で甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモンを測れば、機能が高いのか低いのかを確認できます。
- 症状が数週間以上続いているかどうかを整理する(いつからか、何が変わったか)
- 体重の変化は数値で記録しておく(増えたのか減ったのか、何kgか)
- 市販のヨウ素を含むうがい薬やサプリメントを使っている場合は伝える
- 家族に甲状腺の病気の方がいる場合も伝える
甲状腺とホルモンの働き
甲状腺は首の前側、のどぼとけの下にある小さな臓器で、甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは全身の代謝の速さを調整する働きがあり、体温や心臓の動き、腸の動き、皮膚や髪の状態にまで関わります。
甲状腺ホルモンの量は、脳の下垂体から出るTSHによって調整されています。ホルモンが足りなくなるとTSHは増え、多すぎるとTSHは減ります。この関係が検査結果を読む土台になります。
働きが落ちるとき(甲状腺機能低下症)
甲状腺ホルモンの作用が必要よりも低下した状態を、甲状腺機能低下症といいます。代謝が落ちるため、全体として「動きがゆっくりになる」方向の症状が出ます。
出やすい症状
日本内分泌学会の一般向け解説では、一般的な症状として無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘が挙げられています。そのほか、徐脈、うつ状態、脱毛、皮膚の乾燥などがみられることもあります。
これらは加齢や更年期、疲労による症状と重なるため、見過ごされやすい面があります。「年齢のせい」と決める前に一度確かめておくという考え方が役に立ちます。
背景にある病気
甲状腺機能低下症の原因としてもっとも多いのは橋本病(慢性甲状腺炎)です。自己免疫のしくみが関わる病気で、甲状腺全体が腫れることが特徴とされています。日本甲状腺学会の診断ガイドラインでは、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb)が陽性であることなどが検査所見に挙げられています。
そのほか、ヨウ素の摂りすぎ、甲状腺の手術後、放射線治療後などが原因となることもあります。また、脳の病気などにより下垂体からのTSHが不足して起こる「中枢性」のものもあります。
働きが強すぎるとき(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンが過剰になると、代謝が速くなる方向の症状が出ます。代表的な病気がバセドウ病です。TSH受容体に対する抗体が甲状腺を刺激し続けることで、甲状腺ホルモンが過剰につくられる自己免疫疾患とされています。
症状としては、動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどが典型的です。加えて、疲労感、下痢、筋力低下、女性では月経が止まること、甲状腺の腫れ、眼の突出などがみられることがあります。「食べているのに体重が減る」という変化は、見逃したくないサインです。
日本内分泌学会の解説では、バセドウ病は人口1000人あたり0.2〜3.2人とされ、20〜30代の若い女性に多く、男女比は1対3〜5くらいとされています。治療には薬物療法、放射性ヨウ素内用療法、甲状腺摘除術の3つがあり、状況に応じて選択されます。なお、甲状腺ホルモンが高くなる状態はバセドウ病だけではなく、一時的に甲状腺が壊れることで起こる無痛性甲状腺炎などもあるため、区別が必要です。
検査はTSHと甲状腺ホルモンを組み合わせて見る
甲状腺の機能は、TSHと遊離T4(FT4)、必要に応じて遊離T3(FT3)を測って評価します。日本甲状腺学会の診断ガイドラインでは、次のような組み合わせが示されています。
| 状態 | 遊離T4(FT4) | TSH |
|---|---|---|
| 原発性甲状腺機能低下症 | 低値 | 高値 |
| 中枢性甲状腺機能低下症 | 低値 | 低値〜基準範囲内 |
| バセドウ病 | 高値(FT3も高値のことが多い) | 低値 |
| 無痛性甲状腺炎 | 高値 | 低値 |
バセドウ病では、これに加えてTRAbまたはTSAbが陽性であることなどが検査所見に含まれます。数値の高低だけで病名が決まるわけではなく、抗体検査や超音波検査などを組み合わせて判断します。
潜在性甲状腺機能低下症という状態
TSHは高いのに甲状腺ホルモンは基準範囲内、という結果になることがあります。これを潜在性甲状腺機能低下症といいます。日本内分泌学会の解説では、日本での調査で健康な人の4〜20%に認められるとされ、特に女性に多く、年齢が上がるにつれて増加すると述べられています。
対応はTSHの値、症状の有無、年齢、妊娠の希望などによって変わります。すぐに治療が必要とは限らず、経過を見ることもあります。妊娠を希望される方は必ずお伝えください。
受診を考えたい目安
次のような場合は、早めのご相談で対応しやすくなります。
- 強い疲れやすさ、寒がり、むくみ、便秘が数週間以上続いている
- 食事量は変わらないのに体重が明らかに増えた、または減った
- 安静にしていても動悸がする、手の震えが気になる
- 首の前側が腫れている、しこりに触れる
脈が非常に速い、高い熱とともに意識がもうろうとする、といった場合は様子をみずにすぐ医療機関を受診してください。
当院での対応
当院では内科で問診と首の診察を行い、必要に応じて血液検査(TSH・甲状腺ホルモン等)や超音波検査をご案内します。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。詳しくは内科のページ、検査・設備のページをご覧ください。はじめて受診される方は初めての方へもご確認ください。
参考文献(最終確認:2026年7月)
- 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html - 日本内分泌学会「甲状腺機能低下症」(一般の皆様へ)
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=38 - 日本内分泌学会「バセドウ病」(一般の皆様へ)
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=40
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。検査値の解釈や治療の方針は、他の検査結果・持病・服用中のお薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。疲れやすさの原因としては貧血も考えられます。貧血と言われたら。鉄欠乏性貧血の原因と対応もあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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