禁煙という治療。やめると体はどう変わるか
「やめたいけれど、やめられない」。喫煙について、そう感じている方は少なくありません。厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、現在習慣的に喫煙している方の割合は総数14.8%(男性24.5%、女性6.5%)で、そのうちたばこをやめたいと思う方は18.6%(男性17.2%、女性23.1%)と報告されています。やめたい方は決して少数ではありません。
まず結論:禁煙は意志の問題ではなく、治療の対象
たばこがやめにくいのは、ニコチンへの依存が関わるためです。依存は医学的に評価でき、日本では保険診療で禁煙治療を受けることができます。「根性が足りない」という話ではなく、治療という選択肢があると知っておくことが出発点になります。
- 1日の喫煙本数と、喫煙を始めた年齢(喫煙年数)を書き出す
- 過去に禁煙を試みた経験があれば、いつ・どのくらい続いたかを整理する
- 吸いたくなる場面(食後、飲酒時、仕事の合間など)を把握する
- 持病や服用中のお薬がある場合は、受診時に必ずお伝えください
喫煙と因果関係が確実とされている病気
厚生労働省 e-ヘルスネットでは、喫煙との因果関係が確実(レベル1)と判定された主な病気として、次のものが挙げられています。
- がん:肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、膀胱、子宮頸部
- 循環器の病気:虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈硬化症
- 呼吸器の病気:慢性閉塞性肺疾患(COPD)
同サイトでは、喫煙を始める年齢が若いほど、がんや循環器疾患のリスクを高めるだけでなく、総死亡率も高くなると述べられています。また、喫煙本数を減らすことや低タール・低ニコチンのたばこに切り替えることは、虚血性心疾患のリスク低下にはつながらないとの結論が示されています。「減らす」ではなく「やめる」ことに意味があるという点が重要です。
やめたあと、体はどう変わるか
禁煙による変化は、数十年先の話だけではありません。比較的早い段階から現れる変化があります。
| 禁煙してからの期間 | みられる変化 |
|---|---|
| 24時間 | 心臓発作のリスクの低下がみられる |
| 早ければ1か月 | せきや喘鳴(ぜんめい)などの呼吸器症状が改善する |
| 1年 | 肺機能が改善する |
| 2〜4年 | 虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが約1/3減少する |
| 5年以降 | 肺がんのリスクが低下する |
| 10〜15年 | さまざまな病気にかかる危険が非喫煙者のレベルまで近づく |
あわせて、せきやたんなどの呼吸器症状の改善や、免疫機能が回復してかぜやインフルエンザなどの感染症にかかりにくくなることも挙げられています。予防接種の考え方についてはインフルエンザ予防接種、受けるベストな時期はいつ?もご覧ください。
がん・循環器の病気のリスクはどう下がるか
国立がん研究センター がん情報サービスでは、禁煙後の変化として次のように示されています。
- 禁煙1年後:冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の約半分に低下する
- 禁煙5〜15年:脳卒中のリスクが非喫煙者と同じになる
- 禁煙10年後:肺がんのリスクが喫煙者に比べて約半分に低下し、口腔がん、咽喉頭のがん、食道がん、膀胱がん、子宮頸がん、膵臓がんのリスクも低下する
- 禁煙15年後:冠動脈性心疾患のリスクが非喫煙者と同じになる
ここで大切なのは、リスクの下がり方が病気によって違うことです。心臓や血管への影響は比較的早く改善しますが、がんのリスクが下がるまでには年数がかかります。だからこそ、始めるのが早いほど得られるものは大きくなります。一方で、年齢が高くなってから始めても意味がないということではありません。
禁煙治療(禁煙外来)という選択
国立がん研究センターの解説では、日本では保険診療で禁煙治療を受けることができるとされています。ニコチン依存の程度を評価したうえで、飲み薬や貼り薬などの禁煙補助薬と、面談による支援を組み合わせて進めます。
保険診療で受けるための要件
日本循環器学会ほかによる「禁煙治療のための標準手順書」では、保険診療で禁煙治療を行う対象として次の条件が示されています。
- ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と診断されること(5点以上)
- 35歳以上の方については、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること。35歳未満についてはこの指数の要件は廃止されています
- 直ちに禁煙することを希望していること
- 禁煙治療を受けることを文書により同意していること
この要件や自己負担の考え方は制度改正により変更される場合があります。最新の情報は、受診される医療機関または厚生労働省の情報でご確認ください。
治療の進み方
同手順書では、初回の管理料を算定した日から起算して12週間にわたり、計5回の禁煙治療を行った場合に算定するとされています。単に薬を受け取るだけでなく、期間を決めて複数回の面談を重ねる形で進みます。使用できる禁煙補助薬の種類や供給状況は時期によって変わることがありますので、受診時にご確認ください。
やめようとするときの具体的な工夫
治療と並行して、生活のなかでの工夫も助けになります。
- 開始日を決め、前日までにたばこ・ライター・灰皿を手元から片付ける
- 吸いたくなる場面を避ける(食後はすぐ席を立つ、飲酒の機会を一時的に減らす)
- 吸いたい波が来たら、水を飲む・歯を磨く・短く歩くなど、数分をやり過ごす行動を決めておく
- 一度吸ってしまっても、そこで終わりにせず再開する(失敗を前提に計画する)
また、たばこの煙は周囲の方の健康にも影響します。ご家族に小さなお子さまや持病のある方がいる場合、禁煙はご自身だけの問題ではありません。
当院での対応
当院では内科で、喫煙に関連する症状(せき、たん、息切れなど)のご相談や、生活習慣病の管理のなかで喫煙についてのお話をうかがっています。お電話でご確認ください。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。詳しくは内科のページ、健康診断のページをご覧ください。はじめて受診される方は初めての方へもご確認ください。
参考文献(最終確認:2026年7月)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「禁煙の効果」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-08-001.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙者本人の健康影響」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-002.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙と循環器疾患」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-002.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「禁煙による健康への効果」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco07.html - 日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会・日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第8.1版」
https://www.j-circ-kinen.jp/attempt/runbook/index.html - 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。検査値の解釈や治療の方針は、他の検査結果・持病・服用中のお薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。いびきや日中の眠気が気になる方はいびきと日中の眠気。睡眠時無呼吸症候群もあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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