気管支喘息。夜や明け方の咳と発作の予防
夜中や明け方に咳で目が覚める。走ると息が苦しくなる。かぜをひくたびに咳が長引く。こうした症状が繰り返されるとき、気管支喘息が関わっていることがあります。喘息は、症状のないときの手当てが結果を左右する病気です。
まず結論:炎症を抑える薬と、発作を止める薬は別物
喘息の薬は、大きく2つに分かれます。毎日続けて気道の炎症を抑える「長期管理薬」と、発作のときに気道を広げる「発作治療薬」です。この2つは役割が違い、置き換えることはできません。日本呼吸器学会の解説では、喘息治療の主役は吸入ステロイド薬であり、長期的な炎症の管理が重要とされています。
症状が落ち着くと吸入をやめてしまう方がおられますが、炎症は目に見えないところで続いていることがあります。中止や減量は自己判断せず、診察時にご相談ください。
- 症状が出た日と時間帯を記録します
- 発作治療薬を使った回数を数えておきます(使用が増えていれば管理の見直しが必要です)
喘息はどういう病気か
日本呼吸器学会の解説では、気管支喘息は「空気の通り道(気道)に炎症が続き、さまざまな刺激に対して気道が敏感になり発作的に気道が狭くなること」を繰り返す病気と説明されています。有病率は小児で8〜14%、成人で9〜10%とされ、決して珍しい病気ではありません。
症状は「発作的に咳や痰が出て、ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴って息苦しくなります」と説明され、夜間や早朝に出やすく、冷気や香りで誘発されることもあります。原因はチリダニ、ハウスダスト、ペットのフケ、カビなどのアレルギーが多く、ウイルス感染も関わります。特定できない場合もあります。
咳だけが症状で、ゼーゼー・ヒューヒューや息苦しさがないものは咳喘息と呼ばれ、長引く咳の原因として頻度が高いことが知られています。
なぜ夜や明け方に症状が出るのか
同学会のQ&Aでは、喘息の炎症は夜間や早朝に悪化しやすいと説明されています。加えて、横になると気道が狭くなりやすい、寝具のダニにさらされやすい、明け方は気温が下がるといった要素が重なります。
ですから「昼間は平気だから軽い」とは言えません。夜間や明け方の症状は、喘息の管理が十分でないことを示すサインと受け止めてご相談ください。なお、夜や明け方の咳には逆流性食道炎、後鼻漏、心不全が関わることもあり、区別が必要です。
診断のために行う検査
診断は、症状の出方(繰り返す、変動する、夜間や早朝に出る)に、検査の結果を組み合わせて行います。呼吸機能検査(スパイロメトリー)では空気の流れを測り、同学会の解説では「気管支拡張薬を吸ったあとにその流れが改善すれば喘息の可能性が高い」とされています。
1秒率(FEV1/FVC)は気道が狭くなる病気を見つける指標で、同学会のQ&Aでは70%以上を正常とすると説明されています。ほかに、喀痰の検査、呼気一酸化窒素(NO)濃度の測定、アレルギー検査が用いられます。
長期管理薬と発作治療薬の違い
岐阜県医師会が公開している成人喘息のガイドラインでは、長期管理薬は「継続的に使用しコントロール良好を目指す薬剤」で吸入ステロイド薬が第一選択、発作治療薬は「喘息発作治療のために短期間に使用する薬剤」で主に短時間作用性β2刺激薬(SABA)が用いられると整理されています。
| 項目 | 長期管理薬 | 発作治療薬 |
|---|---|---|
| 目的 | 気道の炎症を抑え、発作が起きにくい状態を保つ | 狭くなった気道を広げ、そのときの症状をやわらげる |
| 中心となる薬 | 吸入ステロイド薬 | 短時間作用性β2刺激薬(SABA) |
| 使い方 | 症状がなくても毎日続ける | 症状が出たときに使う |
| 注意点 | 効果を実感しにくいが、やめると炎症が戻りやすい | 使用回数が増えているときは管理の見直しが必要 |
発作が起きたときの対応
同ガイドラインでは、軽度から中等度の発作時に短時間作用性β2刺激薬を1〜2パフ吸入し、効果が不十分であれば1時間まで20分おきに吸入を繰り返す方法が示されています。改善しない場合はすぐに受診するよう指導されています。受診が必要な状況として、「中等度(苦しくて横になれない)以上の喘息症状のとき」「β2刺激薬の吸入を1〜2時間おきに必要とするとき」「症状が悪化していくとき」が挙げられています。
発作時の手順は、お一人ごとの状態に応じてあらかじめ決めておくことが大切です。診察の際にご相談ください。
ただちに救急要請を検討すべき症状
次のような状態のときは、吸入を繰り返しながら救急要請をご検討ください。・息が苦しくて会話が続かない、横になれない
・唇や指先が青白い
・意識がはっきりしない、ぼんやりしている
・発作治療薬を吸入しても改善しない、または1〜2時間おきに必要になる
発作を起こしにくくする生活
薬による管理とあわせて、引き金を減らすことが助けになります。
- 寝具を定期的に洗う、掃除機をかけるなど、ダニ・ハウスダストへの対策をとる
- 禁煙する。受動喫煙も避ける。e-ヘルスネットでは喫煙は気管支喘息のリスク因子とされ、受動喫煙と小児の喘息に関連が認められています
- 呼吸器の感染症は発作の引き金になるため、必要なワクチンを検討する
喘息の管理の指針は「喘息予防・管理ガイドライン2024」(2024年10月刊行)などにまとめられており、内容は改訂されます。治療方針は診察のたびに見直していくものと考えてください。
当院での対応
当院は内科で呼吸器疾患に対応しています。長引く咳や、夜間・早朝の咳が続く場合のご相談を承っています。実施していない検査が必要と判断した場合は、対応可能な医療機関をご案内します。
吸入薬は正しく吸えているかどうかで効果が変わります。使っている吸入器を持参いただければ、吸い方の確認ができます。呼吸器の感染症を避けるための接種は予防接種のページをご覧ください。診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。
参考文献
- 日本呼吸器学会 呼吸器の病気「C-01 気管支ぜんそく」
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html - 日本呼吸器学会 呼吸器Q&A「Q3. 夜間や早朝にせきが出ます。」
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q03.html - 日本呼吸器学会 呼吸器Q&A「Q27. 肺機能検査とはどのような検査法ですか?」
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q27.html - 『喘息予防・管理ガイドライン2024』(2024年10月/協和企画)刊行案内
https://www.kk-kyowa.co.jp/service/publishing/book_list/d20241017/ - 岐阜県医師会「喘息ガイドライン(成人用)」
https://www.gifu.med.or.jp/doctor/asthma/guide-adult/ - 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙と呼吸器疾患」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-003.html
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものであり、診断や治療の代わりになるものではありません。症状の受け止め方や必要な検査は、年齢・持病・服用中の薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。長引く咳全般については咳が2週間以上続くとき、考えられることもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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