息切れが増えた。COPD(慢性閉塞性肺疾患)
駅の階段で立ち止まるようになった。同年代の人と歩くと遅れてしまう。こうした変化は「年のせい」で片づけられがちです。しかし喫煙歴のある方に息切れが増えてきたときは、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性を考えます。呼吸機能検査で確かめられる病気であり、進み方を緩やかにする手立てがあります。
まず結論:喫煙歴があって息切れが増えたら呼吸機能検査を
次の2つが重なるときは、一度呼吸機能検査を受けることをご検討ください。ひとつは喫煙歴があること(現在吸っている、または過去に吸っていた)、もうひとつは坂道や階段での息切れ、長引く咳や痰があることです。
COPDはゆっくり進むため、本人が「衰え」として受け止めてしまいやすい病気です。厚生労働省の資料では、日本には40歳以上で530万人以上の患者がいると推計されています。
- これまでに吸ってきた本数と年数を、おおよそで書き出しておきます
- どの程度の動作で息が切れるかをメモします(平地・坂道・階段何段)
- 咳と痰が朝に多いか、年間どのくらい続くかを確認します
COPDとはどんな病気か
厚生労働省 e-ヘルスネットでは、COPDは「たばこ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す」と定義されています。空気の通り道が狭くなり、肺から息を吐き出しにくくなる状態です。
同ページでは、喫煙がCOPDのリスクの9割を占めるとされ、日本でのCOPDによる死亡者数は年間約18,000人と報告されています。
日本呼吸器学会の解説では、喫煙者のおよそ15〜20%が発症するとされ、そのほか大気汚染、呼吸器感染症、職業上の曝露も影響するとされています。吸っていた方全員が発症するわけではありませんが、発症するかどうかを事前に見分けることはできません。
症状の現れ方。「年のせい」と間違われやすい
同学会の解説では、症状として「歩行時や坂道・階段での息切れ、長引くせきやたん」が挙げられ、かぜが長引く傾向もみられるとされています。厚生労働省の資料でも、咳、痰、息切れが主な症状として示されています。
特徴は、日によって大きく変わるのではなく、年単位でじわじわ進むことです。そのため、階段を避ける、歩く速さを落とす、荷物を減らすといった形で本人が生活を合わせてしまい、症状として自覚されにくくなります。
なお、喘息とCOPDは症状が重なる部分があり、両方の特徴を併せ持つ場合もあります。区別や見分けは検査を含めた診察で行います。
診断はスパイロメトリーで行う
診断には呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要です。息を大きく吸って、できるだけ速く吐き出す検査で、吐き出せた空気の量と速さを測ります。
日本呼吸器学会のQ&Aでは、1秒率(FEV1/FVC)は「喘息やCOPDなどの気道が狭くなる病気を簡便に見つける指標」で、70%以上を正常とすると説明されています。COPDのガイドラインでは、気管支拡張薬(気管支を広げる薬)を吸入したあとのスパイロメトリーで1秒率が70%未満であることが診断に必要な条件とされ、厚生労働省の資料にも「FEV1/FVC<70%」という基準が示されています。ほかの病気で説明できないことを確認することも必要です。
あわせて胸部X線検査やCT検査で肺の状態を確認することがあります。診断基準や重症度の分類は、日本呼吸器学会の「COPD診断と治療のためのガイドライン」で示されており、2026年に第7版が刊行されています。ガイドラインは改訂されるため、最新の内容は学会の公表資料でご確認ください。
実施していない検査が必要な場合は、対応可能な医療機関をご案内します。
治療の基本は禁煙
日本呼吸器学会の解説では「禁煙が治療の基本となります」とされています。COPDで失われた肺の機能を元に戻すことはできませんが、禁煙は病気の進み方に関わる、最も大きな手立てです。
禁煙は意志の強さだけの問題ではなく、方法を変えることで続けやすくなる場合があります。
薬物療法と呼吸リハビリテーション
薬物療法は、気管支拡張薬(抗コリン薬、β2刺激薬)の吸入が中心とされています。吸入薬は吸い方によって効果が変わるため、実際の手技を確認することが大切です。また同解説では、呼吸法や運動療法などのリハビリテーションにより「生活の質の向上が期待できます」とされています。息切れを避けて動かなくなると筋力が落ち、さらに動きにくくなるため、無理のない範囲で体を動かすことに意味があります。
増悪(急に悪くなること)を防ぐ
COPDでは、かぜなどの呼吸器感染症をきっかけに症状が急に悪くなることがあります。息切れや咳、痰が普段より強くなり、回復に時間がかかることがあります。
日本呼吸器学会の解説では、予防としてインフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナ、RSウイルスのワクチン接種が挙げられています。どのワクチンをいつ受けるかは、年齢や持病、これまでの接種歴によって異なります。定期接種の対象年齢や間隔は制度改正により変更される場合があります。最新の情報は厚生労働省やお住まいの自治体でご確認ください。当院での取り扱いは予防接種のページ予防接種のページをご覧ください。
- 症状が普段より強くなったら、早めに連絡する
- 手洗いと換気を続け、流行期は混雑を避ける
- 体重が減ってきたら相談する(栄養状態が呼吸筋に関わります)
当院での対応
当院は内科で呼吸器疾患に対応しており、長引く咳や息切れのご相談を承っています。COPDは高血圧、糖尿病、心臓の病気、骨粗鬆症などとあわせて管理が必要になることが多く、かかりつけ医で全体を見ながら進めることに意味があります。
健診で肺機能や胸部の所見を指摘された方は、結果票をお持ちのうえご相談ください。健診の内容は健康診断のページでご案内しています。診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。地図はアクセス・診療時間、来院の流れは初めての方へをご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙と呼吸器疾患」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-003.html - 厚生労働省「高齢者にしのびよるたばこ病 COPD」
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en/06b.html - 日本呼吸器学会 呼吸器の病気「B-01 慢性閉塞性肺疾患(COPD)」
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html - 日本呼吸器学会 呼吸器Q&A「Q27. 肺機能検査とはどのような検査法ですか?」
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q27.html - 日本呼吸器学会「COPD診断と治療のためのガイドライン2026〔第7版〕」(メディカルレビュー社)刊行案内
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20260209000000.html
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものであり、診断や治療の代わりになるものではありません。症状の受け止め方や必要な検査は、年齢・持病・服用中の薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。長引く咳については咳が2週間以上続くとき、考えられることもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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