脂肪肝。お酒を飲まない人にも起こる肝臓の変化
健診で「脂肪肝」と書かれていても、お酒を飲まないので心当たりがない、症状もないので気にしていない、という方は多くいらっしゃいます。脂肪肝は飲酒だけが原因ではなく、体重や血糖、脂質、血圧といった代謝の状態と深く関わっています。ここでは学会の情報にもとづいて整理します。
まず結論:「脂肪肝」で終わらせず、進み方を確認する
脂肪肝と指摘されたときに大切なのは、脂肪がついているかどうかだけでなく、肝臓が硬くなる変化(線維化)が進んでいないかを確認することです。日本消化器病学会・日本肝臓学会の患者向けガイドでは、飲酒に起因しない脂肪性肝疾患のうち、80〜90%は長期の経過でも脂肪肝のまま進行しない一方、10〜20%は徐々に悪化して肝硬変に進行し、なかには肝がんを発症するとされています。
- 血液検査と超音波検査で、まず現状を確認する
- 線維化のリスクを評価する指標があり、必要に応じて追加の検査を検討する
- 肥満がある場合は、減量が治療の中心になる
呼称が見直されています
従来は、飲酒に起因しない脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」、そのうち炎症をともなって進行しうるものを「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼んでいました。近年、国際的に呼称が見直され、日本消化器病学会と日本肝臓学会は2024年8月に日本語病名を公表しています。
| 略語 | 日本語病名 |
|---|---|
| SLD | 脂肪性肝疾患 |
| MASLD | 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 |
| MASH | 代謝機能障害関連脂肪肝炎 |
| MetALD | 代謝機能障害アルコール関連脂肪性肝疾患 |
| ALD | アルコール関連肝疾患 |
診療ガイドラインの改訂が進んでおり、診断基準の細部は今後変わる可能性があります。本記事で患者向けガイド2023の記載を引用する箇所は、そのガイドの「NAFLD」「NASH」という表記を用いています。
お酒を飲まない人にも起こる理由
患者向けガイドでは、アルコール性肝障害と判定される飲酒量の目安を、1日当たりの純エタノール量で男性30g以上、女性20g以上としています。これ以下の飲酒量で脂肪肝がある場合が、従来のNAFLDに当たるという整理です。
飲酒に起因しない脂肪肝の背景としてガイドが挙げているのは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧です。内臓脂肪が多い状態では、インスリンのはたらきが弱まり、肝臓に脂肪がたまりやすくなると考えられています。メタボリックシンドロームの腹囲の基準は、男性85cm以上、女性90cm以上とされています。
ガイドは、日本でのNAFLDの有病率を9〜30%、患者数を1,000万人以上とし、NASHは3〜5%と推定しています。血圧が気になる方は健診で「血圧が高め」と言われたら、まず読んでほしいこともあわせてご覧ください。
どこまで進むのか(線維化・肝硬変・肝がん)
脂肪肝そのものには、ほとんど自覚症状がありません。炎症が続くと肝臓の組織が硬くなる線維化が進み、肝硬変に至ることがあります。ガイドでは、2018年の統計で肝硬変の原因のうちNASHが5.8%を占めていたことが示されています。
あわせて注意が必要なのは、肝臓以外の病気です。ガイドは、NAFLDの方は心筋梗塞や脳卒中で亡くなることも多いとし、肝がんの発症率はウイルス性肝炎より低いものの、心血管疾患や肝臓以外の悪性疾患に注意が必要としています。
検査でわかること
ガイドで挙げられている検査は次のとおりです。当院では血液検査と腹部超音波検査を院内で実施しています。
- 血液検査/ALT、AST、血小板数、アルブミンなど。ガイドではALTが30を超える場合にかかりつけ医の受診が推奨されるとしています
- 画像検査/超音波・CT・MRIなどで脂肪肝の所見を確認します
- 線維化の評価/FIB-4 index(1.3以上で線維化のリスクとされる)、NAFLD fibrosis score(−1.455以上で線維化のリスク)などの指標や、ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7s、M2BPGiといった血液のマーカー
- 肝硬度の測定/超音波やMRIによるエラストグラフィ
- 肝生検/肝臓の一部を針で採取して顕微鏡で観察する検査で、確定診断に用いられます
当院で受けられる健康診断は健康診断のページ、院内の検査機器は検査・設備のページでご案内しています。専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、連携する医療機関へご紹介します。
減量と運動。どれくらいを目標にするか
ガイドでは、肥満をともなうNASHの方について、まず体重の7%を目標に減量することが示されています。体重90kgの方であれば、まずマイナス6kgという例が挙げられています。また、7〜10%の減量でNAFLD/NASHの改善が期待できるとされています。
運動については、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を週3〜4回、30分以上行うこと、関節に負担の少ない範囲での筋力トレーニングやヨガによって筋肉量を増やし基礎代謝を上げることが挙げられています。持病がある方は、運動の内容を診察でご相談ください。
薬については、患者向けガイド2023の時点で、脂肪肝そのものに保険適用となった有効な薬剤はなく開発が進んでいるとされ、抗酸化作用のあるビタミンEや、糖尿病の治療薬が状況に応じて用いられることが記載されています。薬物療法の考え方はガイドラインの改訂により変わる可能性があります。生活習慣病の治療は内科のページでご案内しています。
当院での検査のご案内
当院では、日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医が、血液検査と腹部超音波検査で肝臓の状態を確認しています。健診で脂肪肝や肝機能の数値を指摘された方は、結果をご持参のうえご相談ください。胃や大腸の検査については胃腸科・内視鏡のページをご覧ください。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。
参考文献
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「患者さんとご家族のための NAFLD/NASHガイド2023」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/nafld_2023.pdf - 日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月)
https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/ - 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash2020_2_re.pdf
いずれも本記事執筆時点で公表されている内容にもとづいています。ガイドラインや制度は改訂されることがありますので、最新の情報は各機関の公表資料でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。診断や治療の代わりになるものではなく、個々の症状・体質・服用中のお薬による判断は診察が必要です。気になる点があれば、記事の内容だけでご自身の状態を判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。肝機能の数値や健診結果のご相談は健康診断のページ、生活習慣病の治療は内科のページもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
院長・医院紹介を見る