こどもが発熱したとき、家庭でできること
体温計が39℃を示すと、それだけで気持ちが揺れるものです。けれども家庭で見ていただきたいのは、数字そのものよりもお子さまの全身の様子です。何を見て、どう過ごし、どこで受診を考えるのか。公的な資料に沿って整理します。
まず結論:熱の高さではなく、全身の様子を見る
厚生労働省「上手な医療のかかり方」の啓発資料は、こどもの状態を見るポイントとして「食う」「寝る」「遊ぶ」「出す」ができているかを挙げ、あわせて「お熱の高さ≠状態の悪さ」と明記しています。熱が高いことと状態が悪いことは、同じではないという意味です。
家庭で確かめていただきたいのは、次の4点です。
- 水分がとれているか(少量ずつでも飲めているか)
- おしっこが出ているか(おむつがいつもどおり濡れているか)
- あやすと反応があるか(目が合う、笑う、泣いて訴える)
- 呼吸が苦しくないか(息が速い、肩で息をしている、顔色が悪い)
この4つが保たれていれば、熱の数字が高くてもご家庭で経過を見られる場合があります。逆に、熱がそれほど高くなくても反応が乏しいときは、早めの受診が必要です。
発熱を無理に下げなくてよいと考える理由
発熱は、体が病原体と戦うときに起こる反応です。神戸大学小児科学分野の公開講座資料は、発熱により体内の病原体の増殖を抑える働きがあるとし、「発熱は生体防御の意味があるため、必ずしも体温を下げる必要はありません」としています。熱を下げること自体が治療の目的ではなく、お子さまが楽に過ごせるかどうかを目安にする、という考え方です。
熱の高さから病気の重さはわからない
同資料は、熱の高さから細菌感染かウイルス感染かを判断することはできないとし、熱の高さよりも「元気があるか、水分が取れるか、他にどのような症状があるか」が重要だと述べています。39℃でも機嫌がよいお子さまもいれば、38℃でぐったりするお子さまもいます。数字を追いかけるより、ふだんとの違いに目を向けてください。
家庭でできること
特別なことは必要ありません。次の4つを軸に考えてください。
- 水分をとる。一度にたくさんではなく、少量ずつ回数を分けて与えます
- 休ませる。眠れているなら、体温を測るために起こす必要はありません
- 食事は無理をしない。水分がとれていれば、数日食事量が減っても慌てなくて大丈夫です
- 様子を記録する。いつから、何℃くらいで、水分はどれくらいか。受診の際の手がかりになります
温めるか冷やすかの見分け方
同じ発熱でも、時間帯によって対応が変わります。前掲の公開講座資料は、手足が冷たく寒がっているときは服を増やしたり布団で温めること、その後熱さを感じている様子になったら薄着にして涼しくすることを示しています。冷やす場合は、氷枕や保冷剤などで頭部や、大きな血管がある首・脇の下・足の付け根を冷やす方法が挙げられています。
ただし、嫌がるお子さまに無理に続ける必要はありません。冷やすことは熱を下げる治療ではなく、楽に過ごすための工夫です。
解熱薬をどう考えるか
解熱薬は、熱の数字を下げるためではなく、つらさをやわらげるために使う薬です。前掲資料も、熱があって眠れない、水分が取れない、つらそうなときに使うという位置づけを示し、利点として不快感の改善と脱水の回避を挙げています。
小児の解熱・鎮痛には、一般にアセトアミノフェンが用いられます。厚生労働省の小児薬物療法検討会議の報告書は、アセトアミノフェンが小児の発熱や痛みに対して広く用いられ、有効かつ安全な解熱鎮痛薬であることは小児科医にとって自明であるとしています。一方で、生後3か月未満の乳児については使用経験がなく安全性は確立していないとも記しています。
お薬の種類・剤形・使う間隔は、年齢と体重、症状によって変わります。本記事では用量を扱いません。なお、熱性けいれんの予防を目的とした解熱薬の使用は、日本小児神経学会のガイドラインでは推奨されていません。
小児にアスピリン(サリチル酸系)を用いない理由
ご家庭に大人用の解熱鎮痛薬があっても、こどもには使わないでください。1998年12月、当時の厚生省は使用上の注意の改訂を指示し、アスピリンを含有する医療用医薬品について「15才未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とする」と記載することを求めました。市販のかぜ薬・解熱鎮痛薬についても、アスピリン等を含むものは15才未満の小児が使用しないことと表示されることになりました。
背景にあるのがライ症候群です。同資料では、小児において極めてまれにウイルス性疾患後に、激しい嘔吐、意識障害、けいれんと、肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着を示し、死亡率の高い病態と説明されています。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の安全性情報も、水痘またはインフルエンザにかかっている可能性が高い時期には、この記載に十分留意して投与薬剤を選ぶ必要があるとしています。市販薬を選ぶ前に、医師・薬剤師にご相談ください。
受診をお急ぎいただきたいサイン
時間帯にかかわらず受診をご検討ください
- 生後3か月未満の発熱(予防接種後の反応と考えられる場合を除きます)
- 元気がなく、ぐったりしている/ずっとうとうとしている
- あやしても反応が乏しい、意識の様子がおかしい
- 呼吸があらく苦しそう、声が出せない、唇や顔色が紫っぽい
- けいれんがあった、手足の動きに左右差がある
- 水分をまったく受け付けない
- 脱水を疑う:泣いても涙が出ない、皮膚をつまむと戻るのに時間がかかる、12時間以上おしっこが出ていない
- 発熱が数日以上続く、いったん下がった熱がまた上がって全身の様子も悪い
迷うときの窓口もあります。厚生労働省の子ども医療電話相談事業(#8000)は全国共通の短縮番号で、電話をかけるとお住まいの都道府県の相談窓口につながります。対応する時間帯は都道府県ごとに異なります。
当院でのご相談と、夜間・休日の相談先
当院は小児科を診療科目としており、発熱や体調不良のご相談に対応しています。診察では、のど・胸の音・おなかを確認し、必要に応じて迅速診断検査を行います。受診の際は「いつから」「どのような症状が」「どのくらい続いているか」の3点をお伝えください。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。くわしくは小児科のページ、内科のページ、初めての方へもご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」(1)子どもの健康を見るポイント(2)救急受診が必要な症状
https://kakarikata.mhlw.go.jp/assets/pdf/slide.pdf - 公益社団法人 日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」発熱(38℃以上)
https://kodomo-qq.jp/index.php?pname=hatsunetsu - 神戸大学大学院医学研究科 小児科学分野 こども急性疾患学部門「こどもの発熱とその対応」(第22回こども急性疾患学寄附講座 公開講座)
https://www.med.kobe-u.ac.jp/pediat/pdf/sirato22.pdf - 厚生労働省 小児薬物療法検討会議 報告書「アセトアミノフェンの『小児科領域における解熱及び鎮痛』」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1212-7g.pdf - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)使用上の注意改訂情報(平成10年12月24日指示分)
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/revision-of-precautions/0007.html - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品・医療用具等安全性情報 No.167
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0098.html - 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_55223.html
本文中の考え方・注意事項・受診の目安は上記資料の公表内容に基づいています(2026年7月時点)。医薬品の添付文書の記載や公的資料の内容、相談窓口の運用は改訂される場合があります。最新の情報は各機関の公表資料でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。発熱の原因や必要な検査、お薬の適応と用量は一人ひとり異なり、診察が必要です。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。水分がとれないときはこどもの脱水を見逃さない。経口補水の進め方、夏に流行しやすい病気は夏にはやる子どもの感染症。手足口病・咽頭結膜熱もあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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