RSウイルス感染症。赤ちゃんの咳と呼吸に注意
「鼻水から始まったのに、だんだん咳がひどくなってきた」。赤ちゃんの風邪でよくあるご相談です。その原因のひとつがRSウイルスです。多くは軽く済みますが、月齢の小さいお子さまでは呼吸の状態が短時間で変わることがあります。何を目印に見守ればよいのかを整理します。
まず結論:熱の高さよりも「呼吸の様子」を見る
RSウイルス感染症で判断の手がかりになるのは、体温の数字よりも呼吸のしかたと、水分や母乳・ミルクがとれているかです。厚生労働省の案内でも、機嫌がよく辛そうでなければ様子をみたりかかりつけ医に相談することでよく、呼吸が苦しそうなとき、食事や水分がとれないときは受診を検討すると説明されています。
- 咳の回数だけでなく、息を吸うときの様子を見る
- 1回に飲む量が減っていないか、時間がかかっていないか
- 眠れているか、抱っこしても機嫌が戻らないか
- 生後6か月以内、特に生後1か月未満は早めにご相談いただく
RSウイルス感染症とはどんな病気か
RSウイルスは呼吸器の感染症を起こすウイルスです。厚生労働省のQ&Aによると、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児が少なくとも1度は感染するとされています。一度かかっても免疫が十分には続かず、何度も感染と発病を繰り返します。
潜伏期間は2〜8日、典型的には4〜6日です。発熱や鼻水などの症状が数日続きます。初めて感染した乳幼児のうち約7割は鼻水などの上気道炎症状だけで数日のうちに軽快しますが、約3割では咳が悪化し、ゼーゼーという音(喘鳴)や呼吸困難が現れると報告されています。
流行する時期と感染経路
流行の時期は一定ではありません。厚生労働省は、近年は夏から増加傾向となり秋にピークがみられていた一方、2021年以降は春から初夏に増加が続き夏にピークがみられていると説明しています。「冬の病気」と考えていると出遅れることがあります。
感染は主に接触感染と飛沫感染で広がり、空気感染はしないと考えられています。おもちゃや手すりの消毒、流水と石けんによる手洗い、咳や鼻水のある方のマスク着用が対策として挙げられています。症状のある方が乳幼児との接触を避けることも予防につながります。
乳児で重症化することがある理由
赤ちゃんの気管支は細く、炎症で内側が腫れると空気の通り道が狭くなりやすいためです。RSウイルスは乳幼児の細気管支炎の50〜90%、肺炎の約50%を占めるとされています。細気管支炎は、気管支の末端の細い部分に炎症が起こり、息を吐きにくくなる状態です。
特に注意が必要なのが月齢の小さい時期です。厚生労働省は、生後6か月以内に感染した場合は細気管支炎や肺炎など重症化する場合があるとし、さらに生後1か月未満では症状が典型的でないため診断が難しく、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあると注意を促しています。重篤な合併症として無呼吸発作や急性脳症も挙げられています。
特に注意したいお子さま
重症化しやすい対象として、早産で生まれたお子さま、生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患のあるお子さま、神経・筋の疾患や免疫不全のあるお子さま、そして生後6か月以内の乳児が挙げられています。慢性呼吸器疾患などの基礎疾患をお持ちのご高齢の方も、感染に注意が必要とされています。
受診をお急ぎいただきたい呼吸のサイン
下記は一般的な目安です。当てはまる場合は、時間帯にかかわらずご相談ください。
こんなときは早めの受診・救急の受診をご検討ください
- 呼吸が速い(多呼吸)、ゼーゼーする、肩で息をしている
- 息を吸うときに鼻の穴が開く、のどのくぼみや肋骨の間がへこむなど、呼吸に努力を要している
- 母乳・ミルクの量が明らかに減った、飲みながら苦しそうにする、水分がとれない
- 息が止まる、顔色や唇の色が悪い、呼吸が弱い
- ぐったりして呼びかけへの反応が弱い
- けいれんが止まらない、けいれんが止まっても意識が戻らない
受診の際は、いつから、どのような症状が、どのくらい続いているかをお伝えください。哺乳量や睡眠の様子も手がかりになります。小児科のページに、持ち物と家庭での見守り方をまとめています。
家庭での見守りと、治療の考え方
RSウイルス感染症に特効薬はなく、治療は基本的に対症療法です。厚生労働省は、酸素投与、点滴、呼吸管理など症状を和らげる治療を行うと説明しています。
ご家庭では、水分を少量ずつ回数を分けてとること、鼻水が多いときは吸引などで呼吸を楽にすることが基本になります。咳止めや解熱薬の使い方は月齢と体重で異なりますので、市販薬を使う前にご相談ください。
予防の考え方と、当院でのご相談
予防に関する制度は近年動きがあります。厚生労働省は、2026年度から、妊婦の方へのRSウイルスワクチンの予防接種が予防接種法に基づく定期接種の対象になったとしており、対象は接種時点で妊娠28週0日から36週6日までの妊婦の方、1回の接種とされています。生まれてくる赤ちゃんの重症な下気道感染症を防ぐことを目的としたものです。また60歳以上の方を対象としたワクチンもあります。
加えて、早産児や心肺に基礎疾患のあるお子さまなど、対象が限られた予防的な抗体製剤が用いられる場合があります。対象・要件は制度の改正により変わりうるため、最新の情報をご確認ください。
当院は小児科を診療科目としており、お子さまの発熱・咳・呼吸の症状のご相談に対応しています。必要に応じて迅速診断検査を行います。接種のご案内は予防接種のページ、ご家族の内科的なご相談は内科のページ、初めての方へもご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「RSウイルス感染症に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rsv_qa.htm - 厚生労働省「RSウイルス感染症」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rsv.html - 厚生労働省「RSウイルスワクチン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rs/index.html - 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「RSウイルス感染症(詳細版)」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/respiratory-syncytial-virus-infection/detail/index.html - 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう」
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese.pdf
本文中の数値・分類は上記資料の公表内容に基づいています(2026年7月時点)。制度や指針は改正される場合がありますので、最新の情報は各機関の公表資料でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。お子さま一人ひとりの状態は月齢や基礎疾患によって異なり、診察が必要です。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。発熱時の対応は熱性けいれんが起きたとき、どうすればよいか、接種の全体像はこどもの予防接種スケジュールもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
院長・医院紹介を見る