こどもの脱水を見逃さない。経口補水の進め方
嘔吐や下痢が続いたとき、発熱で飲みが落ちたとき、夏に汗をかいたとき。こどもは大人より短い時間で水分が不足します。とはいえ、家庭で見るポイントは多くありません。
まず結論:尿とご機嫌を見て、少量ずつ何度も
覚えていただきたいのは3つです。
- おしっこが出ているかを見る。おむつがいつもどおり濡れているかが目安になります
- 反応とご機嫌を見る。あやすと笑う、目が合う、泣いて訴えるなら落ち着いて見られます
- 飲ませ方は「少量ずつ、回数を分けて」。一度にたくさん飲ませると吐いてしまうことがあります
逆に、おしっこが半日以上出ていない、呼びかけへの反応が乏しい、飲ませてもすぐ吐くという状況では、家庭でのケアを続けるより受診をご検討ください。
こどもが脱水になりやすい理由
こどもは体重に対して体の水分が占める割合が大きく、代謝も活発です。そのため、嘔吐や下痢、発熱、汗で失われる水分の影響を大人より受けやすくなります。加えて、小さなお子さまは「のどが渇いた」と自分で訴えることができません。
厚生労働省の「ノロウイルスに関するQ&A」は、ウイルス性の胃腸炎に効果のある抗ウイルス剤はなく通常は対症療法が行われるとしたうえで、とくに乳幼児と高齢者について「脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう」としています。脱水が重い場合は、医療機関での輸液(点滴)が必要になります。
同Q&Aは市販の下痢止め(止しゃ薬)について「病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましい」とも述べています。自己判断で下痢を止めようとせず、水分を保つことを優先してください。
見逃したくない脱水のサイン
日本小児科学会が運営する「こどもの救急」は、下痢のときに緊急性が高い項目として、目がくぼんでいる/くちびるや口の中が乾燥している/何度も吐く/血便になっている/元気がなくぐったりしている/呼吸があらくしんどそう/顔色・皮膚色が悪い/生後3か月未満である/38℃以上の発熱があるを挙げています。反対に、水分がとれている、おしっこが出ている、元気があるという状態は、家庭で見られる目安とされています。
家で確かめられる3つのポイント
厚生労働省「上手な医療のかかり方」の啓発資料は、脱水の観察ポイントとして次の3つを示しています。道具は要りません。
- 皮膚をつまんだとき、戻るのに時間がかかる(おなかや手の甲の皮膚を軽くつまんで離します)
- 泣いても涙が出ない
- 12時間以上おしっこが出ない
いずれかが当てはまるときは、水分を増やす工夫だけで様子を見るのではなく受診をご検討ください。口の中や舌の乾き、目のくぼみ、ぐったりして反応が乏しい様子も手がかりです。
経口補水液とスポーツドリンクの違い
経口補水液は、消費者庁の説明では「感染性胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水時の水・電解質の補給のために利用する飲み物」で、国が許可した病者向けの飲み物(特別用途食品)として位置づけられています。
スポーツドリンクとの違いも同庁が示しています。経口補水液は一般的なスポーツドリンクなどの清涼飲料水よりもナトリウムやカリウムの量が多く、脱水時に失われた水と電解質を体内に素早く吸収できるような配合とされています。国は電解質と糖の濃度、その比率、浸透圧について許可基準を定めており、水と電解質と糖の組み合わせを整えた飲み物といえます。
一方のスポーツドリンクは、運動時の水分・エネルギー補給を目的とした清涼飲料水で、一般に糖の割合が高く電解質は少なめです。汗をかいたときの補給には使えますが、下痢や嘔吐による脱水で経口補水液と同じ役割は期待できません。
量や飲ませ方は表示と医師の指示に従う
消費者庁は、経口補水液について「日常的に飲んだり、大量に飲むと血圧や心臓に負荷がかかることが懸念されます」とし、「経口補水液が必要かどうかは、自分で判断せず、医師、管理栄養士、薬剤師等に相談してください」としています。
したがって、本記事では具体的な量や濃度を示しません。与える量と回数は、市販品の表示(1日の目安量など)と、診察を受けている場合は医師の指示に従ってください。また、家庭で塩や砂糖を加えて自作すると濃度が狂いやすいため、おすすめしません。
少量ずつ、回数を分けて与える
吐いた直後に大量に飲ませると、また吐いてしまいます。釧路市夜間急病センターの案内は、嘔吐・下痢時の水分について「少量ずつ飲む・与えてあげることが大切です」とし、一度吐いたからといって「飲めない」と決めつけないよう促しています。スプーンや小さなコップで、時間をおいて少しずつ繰り返してください。
暑い時期は、脱水になる前の予防も大切です。こども家庭庁は「のどの渇きを感じなくても、こまめに水分補給しましょう」とし、「本人が『喉が渇いた』と思ったときには、もうすでにかなり水分が失われています」と説明しています。大量の発汗があった場合には、汗で失われた塩分も補える経口補水液やスポーツドリンクなどが適するとされています。発熱時も同じ考え方です。
なお、こども家庭庁は呼びかけや刺激に対する反応がおかしい、応答がないときは、誤って水分が気道に流れ込む可能性があるため口から水分を摂らせるのは禁物で、すぐに医療機関を受診するとしています。意識がはっきりしないときに無理に飲ませないでください。
すぐに受診していただきたい状況
時間帯にかかわらず受診をご検討ください
- 意識がはっきりしない、呼びかけへの反応がおかしい(この場合、口から水分を与えないでください)
- 嘔吐を繰り返して水分が飲めない
- 半日以上おしっこが出ていない(12時間以上を目安に)
- 血便が出ている
- 泣いても涙が出ない、皮膚をつまむと戻るのに時間がかかる、目がくぼんでいる
- くちびるや口の中が乾いている、ぐったりしている
- 生後3か月未満である
- 呼吸があらく苦しそう、顔色・皮膚色が悪い、強い腹痛が続く
当院でのご相談
当院は小児科を診療科目としており、嘔吐・下痢・発熱と、それに伴う水分摂取のご相談に対応しています。診察では、飲めている量、おしっこの回数、便や吐いたものの様子などをうかがいます。いつから、何回、どのくらいの量だったかを、覚えている範囲でお伝えください。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。嘔吐や下痢があるときは、着替えとビニール袋をお持ちいただくと移動が楽になります。くわしくは小児科のページ、内科のページ、初めての方へもご覧ください。
参考文献
- 消費者庁「経口補水液について」(特別用途食品)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution - 消費者庁「特別用途食品における許可基準型病者用食品の新設」(経口補水液の許可基準)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms206_20230116_03.pdf - 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html - 厚生労働省「上手な医療のかかり方」(1)子どもの健康を見るポイント(2)救急受診が必要な症状
https://kakarikata.mhlw.go.jp/assets/pdf/slide.pdf - 公益社団法人 日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」下痢
https://kodomo-qq.jp/index.php?pname=geri - こども家庭庁「みんなで見守り『こどもの熱中症』を防ぎましょう!」
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/cases/netchusho - 釧路市夜間急病センター「嘔吐・下痢時の注意点と、水分摂取の方法」
https://www.city.kushiro.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/527/outogeripi-.pdf - 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_55223.html
本文中の説明・受診の目安は上記資料の公表内容に基づいています(2026年7月時点)。食品表示の制度や許可基準、相談窓口の運用は改訂される場合があります。最新の情報は各機関の公表資料と、お手元の製品表示でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。脱水の程度の評価、必要な水分の量、輸液の適応は一人ひとり異なり、診察が必要です。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。発熱時の見方はこどもが発熱したとき、家庭でできること、夏の感染症は夏にはやる子どもの感染症。手足口病・咽頭結膜熱、便の症状はこどもの便秘。放っておかないほうがよい理由もあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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