健診の尿検査でわかること。慢性腎臓病(CKD)
健診の結果で「尿蛋白 ±」「尿蛋白 1+」と書かれていて、どうすればよいか迷う方は多いものです。腎臓の働きは、かなり落ちるまで自覚症状が出にくいという特徴があります。だからこそ、健診の尿検査と血液検査は早期に気づくための大切な手がかりになります。ここでは慢性腎臓病(CKD)の考え方を整理します。
まず結論:尿蛋白とeGFRの2つをセットで見る
腎臓の状態は、尿蛋白(尿にたんぱくが漏れていないか)と、eGFR(腎臓がどれだけ働けているか)の2つを組み合わせて評価します。どちらか一方だけでは判断できません。また、1回の結果で決まるものでもありません。
- 健診結果はそのままお持ちいただく(過去数年分あると経過が分かります)
- 尿蛋白が出ていたら、時間をおいて再検査し、持続しているかを確かめる
- 血液検査の血清クレアチニンとeGFRの値もあわせて確認する
- 糖尿病・高血圧で治療中の方は、定期受診のたびに確認するのが望ましい
日本腎臓病協会によると、日本には約1,330万人のCKDの方がいるとされ、これは成人の約8人に1人にあたります。決してまれな状態ではありません。
慢性腎臓病(CKD)とはどういう状態か
CKDは、次の①②のいずれか、または両方が3か月以上持続することで診断されます。「3か月以上」という点が重要で、1回の検査結果だけでCKDと決まるわけではありません。
- ① 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らかであること。特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要とされています
- ② GFRが60mL/分/1.73m2未満であること
腎臓には血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として出す働きがあり、血圧の調整にも関わっています。この働きが少しずつ落ちても、初期にはほとんど症状が出ません。むくみや尿量の変化を感じる段階では、すでに進んでいることもあります。
健診の尿検査でわかること
特定健康診査の基本的な健診項目には検尿(尿糖・尿蛋白)が含まれます。血清クレアチニン検査は「詳細な健診の項目」に位置づけられ、医師が必要と認めた場合に実施されます。健診の種類によって項目が異なるため、結果票をご確認ください。
尿蛋白
尿蛋白は、腎臓のろ過機能に負担がかかっているサインになります。ただし、激しい運動の後、発熱時、立ち続けた後などに一時的に出ることもあります。そのため、1回陽性だったからといってすぐに病気と決まるわけではなく、時間をおいて再度確認することが大切です。逆に、繰り返し陽性が続く場合は、原因を調べる必要があります。
試験紙法の限界と定量検査
健診で使われる試験紙による検査は簡便ですが、日本腎臓学会のCKD診療ガイドでは、尿が濃いとき(濃縮尿)や薄いとき(希釈尿)には評価が難しいと指摘されています。そのため原則として、尿蛋白の濃度と尿中クレアチニンの濃度を測り、g/gCrという単位で評価することが推奨されています。「±」や「1+」だけで判断せず、必要に応じて定量検査を行います。
eGFRと蛋白尿による重症度の区分
CKDの重症度は、原因となる病気(原疾患)、GFR区分、蛋白尿区分を組み合わせて評価します。GFR区分は次のとおりです。
| 区分 | 腎機能の状態 | GFR(eGFR) |
|---|---|---|
| G1 | 正常または高値 | 90以上 |
| G2 | 正常または軽度低下 | 60〜89 |
| G3a | 軽度〜中等度低下 | 45〜59 |
| G3b | 中等度〜高度低下 | 30〜44 |
| G4 | 高度低下 | 15〜29 |
| G5 | 末期腎不全 | 15未満 |
蛋白尿区分は、糖尿病がある場合は尿アルブミン、それ以外では尿蛋白で評価します。
| 区分 | 糖尿病(尿アルブミン) | 糖尿病以外(尿蛋白) |
|---|---|---|
| A1 | 30mg/gCr未満(正常) | 0.15g/gCr未満(正常) |
| A2 | 30〜299mg/gCr(微量アルブミン尿) | 0.15〜0.49g/gCr(軽度蛋白尿) |
| A3 | 300mg/gCr以上(顕性アルブミン尿) | 0.50g/gCr以上(高度蛋白尿) |
eGFRが同じでも蛋白尿が多いほどリスクは高くなります。eGFRだけを見て安心しないことが大切です。
腎臓の専門医への相談を考える目安
同ガイドでは、腎臓専門医への紹介を検討する目安として次のような基準が示されています。
- 尿蛋白が0.50g/gCr以上、または試験紙法で2+以上
- 蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)
- 40歳未満でGFR 60未満、40〜70歳でGFR 50未満、70歳以上でGFR 40未満(単位はmL/分/1.73m2)
これは目安であり、進行の速さや原因によって判断は変わります。まずはかかりつけの内科でご相談いただき、必要に応じて連携先の医療機関をご紹介します。
食事と生活で気をつけること
日本腎臓学会のCKD診療ガイド2024では、食塩摂取量の目標として6.0g/日未満が示され、高齢の方など、個々の状況に応じて無理のない目標を定める場合もあるとされています。たんぱく質の摂取量はステージによって考え方が変わります。
| ステージ | たんぱく質摂取量の目安 |
|---|---|
| G1〜G2 | 過剰にならないよう注意する(上限1.3g/kg/日が目安) |
| G3a | 0.8〜1.0g/kg/日 |
| G3b以降 | 0.6〜0.8g/kg/日 |
エネルギー摂取量はおおむね25〜35kcal/kg/日が推奨され、肥満のある場合は20〜25kcal/kg/日で指導することもあるとされています。あわせて血圧・血糖の管理と禁煙が重要です。市販の鎮痛薬を長く続けている場合は受診時にお伝えください。血圧については健診で「血圧が高め」と言われたらもご覧ください。
当院での対応
当院では内科で尿検査・血液検査を行い、尿蛋白とeGFRの経過を確認します。必要に応じて超音波検査で腎臓の形を確認し、血管年齢測定などもご案内します。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。詳しくは内科のページ、健康診断のページをご覧ください。はじめて受診される方は初めての方へもご確認ください。
参考文献(最終確認:2026年7月)
- 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」前文(PDF)
https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch01.pdf - 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2012」(PDF)
https://jsn.or.jp/guideline/pdf/CKDguide2012.pdf - 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」8 栄養(PDF)
https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch08.pdf - 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」慢性腎臓病(CKD)(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586595.pdf - 日本腎臓病協会「慢性腎臓病(CKD)について」
https://j-ka.or.jp/ckd/ - 厚生労働省 e-ヘルスネット「特定健康診査の検査項目」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-04-005.html
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。検査値の解釈や治療の方針は、他の検査結果・持病・服用中のお薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。健診で貧血を指摘された方は貧血と言われたら。鉄欠乏性貧血の原因と対応もあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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