いびきと日中の眠気。睡眠時無呼吸症候群
「家族にいびきを指摘された」「昼間、会議中や運転中に強い眠気に襲われる」。この2つが重なるとき、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)が関わっていることがあります。いびきそのものは珍しいことではありませんが、眠気を伴う場合は検査で確かめる価値があります。
まず結論:いびき+日中の強い眠気は、検査で確かめる
SASは、眠っている間の呼吸を実際に測って評価します。自覚だけでは判断できません。ご本人は眠れているつもりでも、呼吸が止まるたびに睡眠が浅くなり、休息の質が落ちているためです。
- いびきの有無・大きさ、呼吸が止まっているかを、同居のご家族に確認してもらう
- 日中の眠気がどの場面で出るか(運転、会議、食後など)を書き留める
- 体重の推移、飲酒の量と時間帯、睡眠薬の使用状況を整理する
- 高血圧・糖尿病で治療中の方は、定期受診の際にあわせてご相談ください
運転中に強い眠気を感じる場合は、事故につながる危険があります。症状が改善するまで運転を控える判断が必要になることもありますので、早めにご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群とはどういう状態か
日本呼吸器学会の診療ガイドラインでは、無呼吸は「睡眠中の10秒以上の気流停止」、低呼吸は「10秒以上の30%以上の気流の低下と、基準値に対して3%以上の酸素飽和度の低下あるいは覚醒反応を伴う場合」と定義されています。
この無呼吸と低呼吸の1時間あたりの回数を、無呼吸低呼吸指数(AHI)といいます。同ガイドラインでは、AHIが5以上のときに睡眠呼吸障害あり(あるいは閉塞性睡眠時無呼吸)とされています。学会の市民向け解説では、AHIが5以上で、いびき・夜間の頻尿・日中の眠気・起床時の頭痛といった症状を伴うときにSASと診断されると説明されています。
有病率は成人男性で約3〜7%、女性で約2〜5%とされ、男性は40〜50歳代が半数以上を占め、女性は閉経後に増加すると報告されています。
AHIによる重症度の区分
AHIの値によって重症度が分けられます。治療方針を考えるうえでの基本になる区分です。
| 重症度 | AHI(回/時間) |
|---|---|
| 軽症 | 5以上15未満 |
| 中等症 | 15以上30未満 |
| 重症 | 30以上 |
ただし、AHIの数値と眠気の強さは必ずしも一致しません。AHIが軽症の範囲でも眠気が強い方、逆に数値が高くても自覚が乏しい方もいます。数値と症状の両方をあわせて判断します。
なりやすい要因と、体に起きること
なりやすい要因
日本呼吸器学会の市民向け解説では、肥満がSASと深く関係するとされています。そのほか、扁桃が大きいこと、舌が大きいこと、鼻炎や鼻中隔弯曲、あごが後退している、あごが小さいといった、のどや鼻の形の要因も挙げられています。
体型だけで決まるものではありません。やせている方でも、あごの形や鼻の通りが関わってSASになることがあります。「太っていないから関係ない」とは言えない点に注意が必要です。飲酒や睡眠薬は、のどの筋肉の緊張を緩めることで悪化させることがあります。
合併症のリスク
同解説では、SASがあると高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3〜4倍高くなり、特にAHIが30以上の重症例では心血管系疾患を発症する危険性が約5倍になるとされています。厚生労働省 e-ヘルスネットでも、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなり、血糖値やコレステロール値が高くなって生活習慣病につながること、眠気による事故の危険が指摘されています。
血圧が下がりにくい、朝の血圧が高い、といった場合に、背景にSASがあることもあります。血圧の管理については健診で「血圧が高め」と言われたらもあわせてご覧ください。
検査の進め方
検査は、携帯型の装置を使ってご自宅で行う簡易検査と、より詳しく調べる睡眠ポリグラフ検査(PSG)があります。簡易検査では、指や鼻に小さなセンサーを付けて一晩の呼吸と血液中の酸素の状態を記録します。まず簡易検査を行い、結果に応じてPSGを検討するという流れが一般的です。
問診では、いびきや眠気の程度、朝の頭痛、夜間にトイレに起きる回数などをうかがいます。ご家族が見ている呼吸の止まり方は、ご本人には分からない大切な情報です。
治療の選択肢
重症度や体型、のどや鼻の状態によって選択肢が変わります。ひとつの方法だけでなく、組み合わせて行うこともあります。
CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
鼻に装着したマスクから空気を送り、のどが塞がらないようにする治療です。日本呼吸器学会の市民向け解説では、AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASでは、CPAPが標準的な治療とされています。また同学会の診療ガイドラインでは、在宅持続陽圧呼吸療法の対象として「無呼吸低呼吸指数が20以上」であることが挙げられています。
保険診療の要件や自己負担、通院の間隔は制度改正により変更される場合があります。最新の内容は受診時にご確認ください。
マウスピースと減量
下あごを前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)も治療の選択肢とされています。作製は歯科での対応が必要になります。また、肥満のある方では減量することで無呼吸の程度が軽減するとされており、体重管理は治療の柱のひとつです。あわせて、就寝前の飲酒を控えること、横向きで寝る工夫、鼻づまりの治療なども検討します。
当院での対応
当院では内科で問診を行い、いびきと眠気の状況、血圧や体重、他の病気との関係を確認します。
診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。詳しくは内科のページ、健康診断のページをご覧ください。はじめて受診される方は初めての方へもご確認ください。
参考文献(最終確認:2026年7月)
- 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」(PDF)
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf - 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」(市民のみなさまへ)
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。検査値の解釈や治療の方針は、他の検査結果・持病・服用中のお薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。喫煙が気になる方は禁煙という治療。やめると体はどう変わるかもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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