胃カメラでわかる病気。何を見ているのか
胃カメラを受けたあと、モニターの画像を見せられても「何を見ているのかよくわからなかった」という方は少なくありません。検査の流れや前処置は胃腸科・内視鏡のページでご案内しています。この記事では医師が画面の中で何を見て、どんな病気を探しているのかに絞ってご説明します。
まず結論:粘膜の色・凹凸・血管の見え方を見ている
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、先端に小型カメラを備えた細いスコープを挿入し、消化管の内側の粘膜を直接観察する検査です。医師が見ているのは、主に次の3点です。
- 色調/赤みが強い、白っぽい、粘膜が薄くなって下の血管が透けて見える
- 凹凸/盛り上がり(隆起)、くぼみ(陥凹)、ひきつれ、ひだの集まり方
- 血管の見え方/粘膜の下の血管の模様が透けているか、乱れていないか
X線検査が造影剤による輪郭の変化から病変を推定するのに対し、内視鏡検査はこうした細かな変化をその場で確認でき、組織を少量採取して顕微鏡で調べること(生検)もできます。
観察している範囲
胃カメラで観察するのは、食道・胃・十二指腸です。日本消化器内視鏡学会の市民向け解説では、上部消化管内視鏡検査は「胸焼け、腹痛、食欲低下、貧血などの原因を調べるため、食道・胃・十二指腸に発生した潰瘍、炎症、腫瘍、ポリープなどを診断する」ために実施されると説明されています。一方で観察できるのは消化管の内側の粘膜であり、肝臓・胆のう・膵臓は超音波検査など別の検査と組み合わせて確認します。当院では超音波検査も院内で実施しています。
見つかることのある主な病気
食道の病気
- 逆流性食道炎/胃酸が食道に逆流して粘膜に炎症が起きた状態です。食道と胃のつなぎ目に、縦に走る赤みや白っぽいただれとして見えます。
- 食道の粘膜の変化/長期間の逆流に伴い、食道の粘膜が胃に近い性質に置き換わることがあります。
- 食道がん/早い段階ではわずかな色調の変化として現れ、症状が出ないことも少なくありません。
胃の病気
- 急性胃炎・慢性胃炎/粘膜の赤み、むくみ、ただれとして見えます。慢性的な炎症では、粘膜が薄くなる変化(萎縮)がみられることもあります。
- 胃潰瘍/粘膜が深く傷ついた状態で、白い底を持つくぼみとして見えます。出血すると黒い便や貧血の原因になります。
- 胃ポリープ/多くは経過観察でよいものですが、種類の判断のために生検を行う場合があります。
- 早期胃がん/わずかな色調の違いや浅い凹凸として現れることがあります。国立がん研究センターがん情報サービスは、胃がんは「早い段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合があります」と説明しています。
十二指腸の病気
- 十二指腸潰瘍/みぞおちの痛みを伴うことが多く、空腹時に痛む方もいらっしゃいます。
- 十二指腸のポリープ・炎症/必要に応じて生検で確認します。
ピロリ菌感染を示す所見
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の粘膜に感染する細菌で、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍との関連が知られています。感染が続くと、胃の粘膜に特徴的な炎症や萎縮がみられることがあります。内視鏡ではこうした所見の広がり方を確認し、必要に応じて感染の有無を調べる検査を併せて行います。
国立がん研究センターがん情報サービスは、胃がんの危険因子として「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染と喫煙」を挙げ、その他に食塩・高塩分食品の摂取が胃がんが発生する危険性を高めることが報告されているとしています。除菌については、「ピロリ菌の除菌によって確実に発生リスクが低下すると明らかになっています。ただし、ピロリ菌を除菌しても、胃がんになる可能性がゼロにはなりません」と説明し、除菌後も継続的な内視鏡検査が推奨されるとしています。当院での検査・除菌治療の実施内容は胃腸科・内視鏡のページのとおりです。
生検(組織を採る検査)でわかること
気になる所見があった場合、その一部を少量つまみ取って顕微鏡で調べます。生検でわかるのは、見た目だけでは判断が難しい次のような点です。
- 炎症の性質と程度(ピロリ菌感染に伴う所見かどうかを含む)
- ポリープや隆起の種類
- 悪性の所見があるかどうか
結果が出るまでには日数がかかります。当院では結果が出てからあらためてご説明し、次にどうするかまで含めてお伝えしています。
検査の限界とリスク
検査を受けたからといって、すべての病気が見つかるわけではありません
内視鏡検査は消化管の観察に有用ですが、どの検査にも見え方の限界があります。粘膜のひだに隠れた部分や、ごく小さな変化は判別が難しい場合があります。結果に問題がなかった場合でも、症状が変わらない・強くなるときは、あらためてご相談ください。
また、消化管の中に器具を入れる検査ですので、まれではあるものの合併症が起こる可能性があります。日本消化器内視鏡学会の市民向け解説では、上部消化管内視鏡検査の偶発症割合は0.044%と報告されており、消化管出血や穿孔(せんこう=壁に穴があくこと)がまれに発生する可能性があるとされています。当院では検査前に起こりうることをご説明し、ご理解いただいたうえで進めています。
胃がん検診との関係と、当院での対応
症状のない方を対象とした胃がん検診について、国立がん研究センターがん情報サービスは「50歳から、2年に1度定期的に受診してください」とし、検査方法は胃部X線検査または胃内視鏡検査のいずれかを選ぶとしています。厚生労働省の指針では、対象年齢は50歳以上、2年に1度を基本としつつ、当分の間、40歳代の者に対して胃部エックス線検査を実施しても差し支えない、胃部エックス線検査については逐年実施としても差し支えないとされています。なお症状がある場合は検診ではなく、医療機関の受診が必要です。
制度は変わりうる点にご注意ください
検診の対象年齢・受診間隔・検査方法は、指針の改正により変更される場合があります。また市区町村が実施する検診の内容・自己負担額は自治体によって異なります。最新の情報は厚生労働省、国立がん研究センターがん情報サービス、および土浦市のお知らせでご確認ください。
当院では、日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医が胃内視鏡検査を担当しています。胃内視鏡検査には極細径ファイバーを使用しており、スコープが細径のため挿入時の負担が軽減されます。感じ方には個人差がありますので、不安な点は検査前の診察でお聞かせください。検査は予約制です。検査の流れ・前処置は胃腸科・内視鏡のページ、健診で指摘を受けた方は健康診断のページ、初めての方へもご覧ください。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん検診について」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/stomach.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 予防・検診」
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html - 厚生労働省「胃がん・乳がん検診に関する指針の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000114067.pdf - 日本消化器内視鏡学会「上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療」
https://www.jges.net/citizen/check-cure/no3-1 - 日本消化器病学会 ガイドライン一覧
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/
本文中の数値・分類は、上記の公表資料および学会ガイドラインに基づいて記載しています。ガイドラインおよび制度は改訂されます。最新の情報は各出典元でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。診断や治療方針は、症状の内容やこれまでの病歴、服用中のお薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。大腸の検査については大腸カメラと大腸ポリープ。取るべきか、様子を見るかもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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