大腸カメラと大腸ポリープ。取るべきか、様子を見るか
大腸カメラを受けて「ポリープがありました」と言われると、多くの方が「取ったほうがいいのか、様子を見てよいのか」と迷われます。答えは一律ではなく、ポリープの種類・大きさ・形、そしてその方の状態によって変わります。検査の流れや前処置は胃腸科・内視鏡のページでご案内しています。この記事はポリープの種類と、切除の考え方に絞ってご説明します。
まず結論:種類と大きさで判断する
大腸ポリープは、すべてが将来がんになるわけではありません。一方で、腺腫(せんしゅ)と呼ばれる種類の一部は、時間をかけてがんに変わることがあります。そのため、種類の見きわめと大きさが判断の軸になります。
- 種類の推定は、内視鏡での見え方(形、表面の模様、色調)と、必要に応じた生検で行います
- 服用中のお薬(とくに血液を固まりにくくするお薬)と全身の状態によっても、進め方が変わります
大腸ポリープとは
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできる隆起のことです。大きく分けると、がんとの関連がある腫瘍性のもの(腺腫や鋸歯状病変など)と、関連が乏しい非腫瘍性のもの(過形成性ポリープなど)があります。見た目では、茎のあるもの(有茎性)と、平たく盛り上がるもの(非有茎性)に分けられます。小さいうちは症状を出さないため、健診の便潜血検査や症状のご相談をきっかけに見つかることが多くあります。
腺腫と大腸がんの関係
国立がん研究センターがん情報サービスは、大腸がんについて「腺腫という良性の腫瘍ががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります」と説明しています。つまり、大腸がんには腺腫を経る道筋と、そうでない道筋の両方があるということです。
腺腫を経る道筋があるということは、腺腫の段階で見つけて取ることに意味があるということでもあります。ただし、すべての腺腫が必ずがんになるわけではなく、多くはそのままとどまります。「腺腫があった=がんになる」ではない点を、まず押さえてください。
取るべきか、様子を見るか
日本消化器病学会の『大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)』に切除の方針が示されています。ケアネットによる同ガイドラインの解説では、旧版で「6mm以上の病変は切除を推奨するものの5mm以下については原則経過観察」とされていた点が、改訂版では5mm以下の場合も切除を弱く推奨する形に変更され、5mm以下では経過観察も容認される位置づけとされています。
| 大きさの目安 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 6mm以上の腺腫 | 内視鏡的な切除が推奨されます |
| 5mm以下の腺腫 | 切除が弱く推奨されますが、経過観察も容認されます |
| 非腫瘍性のポリープ | 種類を確認したうえで、経過観察となることが多いです |
判断に影響するのは大きさだけではありません。平たい形やくぼんだ形(陥凹型)の病変は、小さくても慎重な扱いが必要です。抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の方は、切除に伴う出血のリスクを考慮した準備が必要になります。
切除の方法と、切除に伴うリスク
日本消化器内視鏡学会の市民向け解説では、次のような方法が紹介されています。
- ポリペクトミー/茎のあるポリープに対し、輪状のスネアで茎を締め、高周波電流で切除します。
- コールド・ポリペクトミー/小さなポリープを高周波電流を使わずに切除します。ケアネットによる『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』の解説では、後出血や合併症が少なく穿孔リスクが低いとされ、10mm未満の非有茎性腺腫に適応、がんと陥凹型病変には禁忌と紹介されています。
- EMR/病変の根元に生理食塩水を注入し、浮き上がらせてから切除します。
- ESD/大きな病変の周囲を切開し、粘膜下層を剥離して切除します。専門的な設備と体制が必要です。
切除に伴うリスクと、切除後に気をつけること
内視鏡での切除には、出血と穿孔(せんこう=腸の壁に穴があくこと)のリスクがあります。日本消化器内視鏡学会の市民向け解説では、大腸内視鏡の偶発症について全国集計(2008年から2012年の5年間)で0.011%(9,091人に1名の割合)と報告されています。頻度は高くありませんが、起こりうることとしてご理解いただいたうえで進めます。
切除後は消化のよい食事にし、刺激物・アルコールを避け、激しい運動は医師の指示にしたがって控えてください。切除当日だけでなく数日後に出血する(後出血)ことがあります。出血が続く場合、強い腹痛や発熱がある場合は、至急ご連絡ください。
次の検査までの間隔(サーベイランス)
ポリープを切除した後は、一定期間をおいてあらためて大腸を確認します。これをサーベイランスといいます。ケアネットによる『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』の解説では、切除後は3年以内のサーベイランスが弱く推奨されるとされています。
実際の間隔は、切除したポリープの数・大きさ・種類、前回の検査で腸の中を十分に観察できたかなどによって変わります。当院では結果をご説明する際に次回の目安時期を一緒にお伝えしています。「取ったから終わり」ではないという点が、この検査の要点です。
大腸がん検診との関係と、当院での対応
症状のない方を対象とした大腸がん検診について、国立がん研究センターがん情報サービスは「40歳から、1年に1度定期的に受診してください」とし、検査方法は便潜血検査(2日法)としています。陽性となった場合の精密検査については「大腸がんの精密検査で最初に行われるのは全大腸内視鏡検査です」と説明し、症状がなくても「次回の検診を待つのではなく、すぐに医療機関を受診しましょう」と案内しています。
便潜血検査が陽性でも、必ずがんがあるという意味ではありません。痔や炎症が原因のこともあります。ただし「痔があるから」と考えて済ませず、原因を確かめることが大切です。
制度は変わりうる点にご注意ください
検診の対象年齢・受診間隔・検査方法は、指針の改正により変更される場合があります。市区町村が実施する検診の内容・自己負担額は自治体によって異なります。最新の情報は厚生労働省、国立がん研究センターがん情報サービス、および土浦市のお知らせでご確認ください。
当院では、日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医が大腸内視鏡検査を担当しています。検査は予約制です。ポリープが見つかった場合の対応は、大きさ・形・部位、全身状態、服用中のお薬によって変わります。その場で切除できる場合と、あらためて日を設ける場合、専門的な設備を備えた医療機関へご紹介する場合があります。当院での対応方針は胃腸科・内視鏡のページのとおりです。健診で便潜血陽性と言われた方は健康診断のページ、初めての方へもご覧ください。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html - 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/index.html - 日本消化器病学会『大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)』(ガイドライン一覧)
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/cpgf.html - 『大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)』(Mindsガイドラインライブラリ)
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00567/ - 『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』改訂点の解説(ケアネット)
https://www.carenet.com/news/general/carenet/51167 - 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査と治療」
https://www.jges.net/citizen/check-cure/no3-2
本文中の数値・分類は、上記の公表資料および学会ガイドラインに基づいて記載しています。ガイドラインおよび制度は改訂されます。最新の情報は各出典元でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。診断や治療方針は、症状の内容やこれまでの病歴、服用中のお薬によって一人ひとり異なります。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。胃の検査については胃カメラでわかる病気。何を見ているのかもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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