検査で異常がないのに胃が痛む。機能性ディスペプシア
胃カメラを受けて「異常はありません」と言われたのに、胃もたれやみぞおちの痛みが続く。血液検査でも問題がないと言われ、どうすればよいかわからなくなる。こうしたご相談は少なくありません。原因となる病気が見つからないまま症状が続く状態には、機能性ディスペプシアという名前がついており、診断と治療の考え方が整理されています。ここでは日本消化器病学会の患者向けガイドにもとづいてご説明します。
まず結論:検査で異常がないことも診断の一部
機能性ディスペプシアは、「異常がないから病気ではない」という状態ではありません。患者向けガイドは、この病気を「症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」と説明しています。ほかの病気がないことを確かめる過程そのものが、診断の一部になっていると考えてください。
- 検査で異常がなかったことは、無駄な検査だったという意味ではありません
- 症状に応じた治療の選択肢があり、生活の工夫と薬を組み合わせて進めます
- 症状の内容が変わったとき、新しい所見が出たときは、あらためて確認します
機能性ディスペプシアとは
「ディスペプシア」は、みぞおち(心窩部)を中心とした胃の不快な症状をまとめて指す言葉です。胃や食道、そのほかの臓器に症状の原因となる病気が見つからず、症状が慢性的に続く場合に、機能性ディスペプシアとして扱われます。
胃カメラで胃炎の所見が指摘された方も、その所見だけでは症状の説明がつかないことがあります。胃内視鏡検査で何を見ているのかは、胃腸科・内視鏡のページでご案内しています。
当てはまる4つの症状
ガイドで挙げられている代表的な症状は次の4つです。ご自身の症状がどれに近いかを整理しておくと、診察でのご説明がしやすくなります。
| 症状 | 感じ方の例 |
|---|---|
| 食後のもたれ感 | 食事のあと、いつまでも胃に食べ物が残っている感じが続く |
| 早期飽満感 | 食事を始めてすぐにおなかがいっぱいに感じられ、食べ切れない |
| 心窩部痛 | みぞおちのあたりが痛む |
| 心窩部灼熱感 | みぞおちが焼けるような感じがする |
胸やけや呑酸が中心の場合は、胃食道逆流症の関与も考えます。胸やけ・げっぷが続く。逆流性食道炎もあわせてご覧ください。症状が重なることもあり、どちらか一方に決めきれない場合もあります。
診断の進め方と、精査が必要になる場合
ガイドでは、自覚症状に加えて、年齢、これまでの病歴、どのような検査を受けたことがあるかなどによって総合的に診断するとされています。すべての方にすぐ内視鏡検査を行うわけではなく、状況に応じて判断します。
胃カメラなどの精査が必要とされる場合
ガイドでは、次のような場合に胃カメラなどの精査が必要とされています。当てはまるものがあれば、早めにご相談ください。
嘔吐を繰り返す場合/発熱を伴う場合/体重減少を認める場合/治療を開始しても症状が軽快しない場合
院内の検査機器は検査・設備のページでご案内しています。
症状が起こる仕組み
ガイドでは、症状が起こる背景として次のような要素が挙げられています。ひとつの原因だけでなく、いくつかが重なっていると考えられています。
- 胃の運動機能の問題/胃から食べ物が送り出される動き(胃排出)の異常、食べ物が入ったときに胃がふくらむ動き(胃適応性弛緩)の異常
- 内臓の感じやすさ/健康な方より弱い胃の伸展刺激や温度刺激で症状が出現する状態
- 脳腸相関/不安や抑うつの症状などを背景にして症状が生じることがある
- ヘリコバクター・ピロリ菌/感染がある場合、除菌後に症状が改善するかを一定期間おいて確認する考え方がある
ガイドでは、除菌による症状の改善は半年から1年経って確認するとされています。ピロリ菌の検査と除菌についてはピロリ菌と胃がん。検査と除菌の考え方で詳しくご説明しています。
治療の考え方
食事と生活の工夫
ガイドで重要とされている点は、おなかいっぱいまで食べずに少しずつ分けて食べること、高カロリー脂肪食を避けること、お酒やコーヒーを控え禁煙することです。一度にすべてを変えるのではなく、症状が出やすい場面を記録して、当てはまるものから調整していくと続けやすくなります。
お薬による治療
ガイドでは第一選択薬として、胃酸が出るのを抑える薬、胃の動きを良くする薬(アコチアミド)、漢方薬(六君子湯)が挙げられています。症状のタイプによってどれから試すかが変わり、効果を見ながら調整していきます。効果の判定にはある程度の期間が必要です。
すでに他院で処方を受けている方は、お薬手帳をご持参ください。
当院でのご相談
当院は地域のかかりつけ医として、内科・小児科・胃腸科を診療しています。症状が長く続く場合、原因を一度で決めきれないことがあります。症状の変化を追いながら、必要な検査と治療を組み立てていくことが大切です。
生活習慣病で通院中の方は、定期受診の際にあわせてご相談いただけます(内科のページ)。診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。
参考文献
- 日本消化器病学会「患者さんとご家族のための 機能性ディスペプシアガイド2023」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/fd_2023.pdf - 日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)」
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/fd.html - 日本ヘリコバクター学会「ピロリ菌に関するQ&A」
https://www.jshr.jp/citizen/info/question.html
いずれも本記事執筆時点で公表されている内容にもとづいています。ガイドラインや制度は改訂されることがありますので、最新の情報は各機関の公表資料でご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。診断や治療の代わりになるものではなく、個々の症状・体質・服用中のお薬による判断は診察が必要です。気になる点があれば、記事の内容だけでご自身の状態を判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。胃の検査については胃腸科・内視鏡のページ、体調全般のご相談は内科のページもあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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