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消化器・胃腸

通勤前におなかが痛くなる。過敏性腸症候群(IBS)

公開日: 更新日: 監修:院長 杉浦 敏昭
通勤かばんと腕時計を置いた玄関先/人物なし
写真はイメージです。実装時は具体的な alt テキストを付与します。

通勤や通学の前になるとおなかが痛くなる、電車に乗る前にトイレを済ませておかないと不安、会議や試験の前に決まって下痢をする。こうした症状で日常生活に支障が出ている方は少なくありません。ここでは、日本消化器病学会の患者向けガイドにもとづいて、過敏性腸症候群(IBS)の考え方を整理します。

まず結論:検査で異常がなくても、相談していただける症状です

IBSは、日本消化器病学会のガイドで「お腹の痛みや調子がわるく、それと関連して便秘や下痢などのお通じの異常が数ヵ月以上続く状態」と説明されています。検査で目に見える異常が出なくても、症状そのものが診療の対象になります。

  • 同ガイドでは、日本では「およそ10%程度の人がこの病気である」とされています
  • 「命に関わる病気ではありませんが、お腹の痛み、便秘・下痢、不安などの症状のために日常生活に支障をきたすことが少なくありません」とされています
  • ただし、後述の警告症状にあてはまるものがあるときは、別の病気の確認が先になります

過敏性腸症候群とはどんな状態か

腸そのものに炎症や潰瘍、腫瘍といった目に見える変化がないのに、腸の動きや感じ方の調節がうまくいかず、腹痛と便通異常が繰り返される状態です。痛みは排便に関連して強くなったり、排便すると軽くなったりすることがあります。

「気のせい」ではありません。腸の動きと感じ方に実際の変化が起きていると考えられており、生活の工夫と治療で症状の程度を抑えていくことが目標になります。

診断の考え方(Rome IV基準)

国際的にはRome IV基準が用いられます。日本消化器病学会のガイドでは、その内容が「最近3ヵ月の間に、週に1日以上にわたってお腹の痛みが繰り返し起こり、その痛みが下記の2項目以上の特徴を示す」と紹介されています。2項目以上とされている特徴は次のとおりです。

  • 排便に関連して痛みが変化する
  • 排便の回数が変化する
  • 便の形状(外観)が変化する

診断の前に、ほかの病気がないかを確認します。ガイドでは、まず採血、尿検査・便検査、腹部X線検査などの通常検査を行い、必要に応じて大腸内視鏡検査、腹部超音波検査やCT、上部消化管内視鏡検査、小腸の検査などを組み合わせるとされています。実際の診断は診察で行います。基準の内容は改訂されることがありますので、最新の情報は学会の公表資料でご確認ください。

便通の型による4つの分類

IBSは、便の形状にもとづいて型を分けます。型によって使うお薬が変わるため、便の状態を伝えていただくことが役に立ちます。判定にはブリストル便形状スケール(BSFS)が用いられます。

※日本消化器病学会「患者さんとご家族のための過敏性腸症候群(IBS)ガイド2023」にもとづく整理です。実際の分類は診察で行います。
型便の形状(ブリストル便形状スケール)
便秘型タイプ1・2(硬い便、兎の糞のような便)が主体
下痢型タイプ6・7(泥状便、水様便)が主体
混合型硬い便と軟らかい便が同じくらいの頻度で出現
分類不能型タイプ3〜5が主体で、上のいずれにも当てはまらない

型は固定されたものではありません。同ガイドでは、下痢型の方を12年後に調べたところ「20%が下痢型のまま、15%が混合型に、35%が症状消失」と報告されていることも紹介されています。長い目でみると変わりうる症状です。

精査を検討する警告症状・危険因子

次にあげる所見があるときは、IBSと決めてしまう前に、大腸内視鏡検査などで別の病気がないかを確認します。あてはまるものがあれば、市販薬で様子を見ずにご相談ください。

当てはまる場合は大腸内視鏡検査を含む精査を検討します

警告症状・徴候/血便、発熱、予期しない体重減少、異常な身体所見

危険因子/50歳以上の方、過去に大腸の病気にかかったことがある、家族に大腸疾患の既往がある

以上は日本消化器病学会のガイドに挙げられている項目です。ガイドでは、これらがある場合に大腸内視鏡検査などが行われるとされています。

あわせて、夜間に目が覚めるほどの腹痛や下痢がある、これまでと違う便通の変化が急に始まった、便が細くなった、貧血を指摘されたといった点も、診察でお伝えいただきたい内容です。血便を痔のせいと決めてしまわないことも大切です。

脳腸相関。緊張とおなかのつながり

通勤前や会議前に症状が出やすいのは、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関」という仕組みが関わっています。ガイドでは、IBSでは「脳から腸に向かう信号と腸から脳に向かう信号が両方とも強くなっている」と説明されています。

また、ストレスは脳から腸への信号を強くし、自律神経や内分泌を刺激して腸の運動を異常にするとされています。おなかの症状が不安を強め、その不安がまた症状を強めるという循環が起こりやすい状態です。この循環を断つために、症状への対応と生活面の工夫を同時に進めます。

治療の進め方と、当院でのご相談

ガイドでは、生活習慣として「3食を規則的にとる」「暴飲暴食や夜間の大食を避ける」「刺激物・高脂肪の食事・アルコールを控える」ことが挙げられています。食事療法や運動療法も治療の一部として位置づけられています。

お薬としては、消化管運動調節薬、プロバイオティクス、高分子重合体、漢方薬、5-HT3受容体拮抗薬、粘膜上皮機能変容薬などが挙げられています。症状が続く場合には、認知行動療法やマインドフルネスなどの心理療法が用いられることもあります。どれを選ぶかは型や生活状況によって変わります。

当院では、日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医である院長が、大腸内視鏡検査を担当しています。便通の変化が続く方、警告症状にあてはまる方の原因を調べる検査として行っています。検査の流れと前処置は胃腸科・内視鏡のページ、健診の結果でのご相談は健康診断のページでご案内しています。

診療時間は午前9:00〜11:30(水曜・土曜は9:00〜12:30)、午後14:00〜17:30で、水曜午後・土曜午後・日曜・祝日は休診です。便秘が主な症状の方は便秘。市販薬に頼る前に見直したいこともあわせてご覧ください。

参考文献

いずれも本記事執筆時点で公表されている内容にもとづいています。診断基準やガイドライン、制度は改訂されることがありますので、最新の情報は各機関の公表資料でご確認ください。


この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。診断や治療の代わりになるものではなく、個々の症状・体質・服用中のお薬による判断は診察が必要です。気になる点があれば、記事の内容だけでご自身の状態を判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。大腸の検査については胃腸科・内視鏡のページ、院内の検査機器は検査・設備のページもあわせてご覧ください。

院長 杉浦 敏昭
Supervisor 監修:院長 杉浦 敏昭

医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。

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