健診結果の読み方。基準値の意味と「要再検査」
健康診断の結果票が届くと、まず数値と基準値を見比べる方が多いと思います。ただ、基準値を少し外れているからといって、すぐに病気と決まるわけではありません。ここでは結果票の読み方を、基準範囲の考え方と判定区分の意味から整理します。
まず結論:基準範囲を外れても、それだけで病気とは決まらない
結果票の基準範囲は、健康な人の測定値の分布から統計的に定めた範囲です。日本臨床検査医学会の報告書では、基準範囲は一定の条件を満たす人を選び出し、その測定値の分布の中央を含む95%が含まれる上下限値を示したものと説明されています。つまり、健康な方でも20人に1人程度は範囲の外に出る計算になります。
- 基準範囲を外れた=異常、とは限らない
- 基準範囲の中にあっても、経過によっては注意が必要なことがある
- 大切なのは、外れた幅と、前年からの動き、そして他の項目との組み合わせ
「基準範囲」は何を表しているのか
同じ報告書は、基準範囲が「疾病のリスクや予測とは無関係に、ある時点での健康人の測定値から統計的に算出」されるものだと述べています。国際的には「正常値」という言い方は避けるべきとされ、その理由として「正常」という漠然として定義ができない用語は使用しないよう啓発する、と説明されています。
基準範囲は、性別や年齢、測定方法によっても変わります。同じ項目でも施設によって表記されている数値が違うことがあるのは、このためです。
基準範囲と「臨床判断値」は別のもの
もうひとつ知っておきたいのが臨床判断値です。こちらは病気のリスクや予測を研究で調べ、その結果から設定される値です。たとえば特定健康診査では、生活習慣の見直しを勧める値と、医療機関の受診を勧める値が別に定められています。基準範囲とは目的が違うため、「基準範囲の中だから安心」「外れたから治療が必要」と単純に読み替えることはできません。
主な項目の基準範囲のめやす
| 検査項目 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| AST | 13〜30 U/L | 13〜30 U/L |
| ALT | 10〜42 U/L | 7〜23 U/L |
| γ-GT(γ-GTP) | 13〜64 U/L | 9〜32 U/L |
| LDLコレステロール | 65〜163 mg/dL | 65〜163 mg/dL |
| HDLコレステロール | 38〜90 mg/dL | 48〜103 mg/dL |
| 中性脂肪 | 40〜234 mg/dL | 30〜117 mg/dL |
| HbA1c(NGSP値) | 4.9〜6.0% | 4.9〜6.0% |
項目によって男女で範囲が異なることがわかります。ご自身の結果を見るときは、同じ性別の欄と見比べてください。
判定区分A〜Eの意味
結果票には数値のほかに、A・B・Cといった判定がついていることが多いはずです。日本人間ドック学会が示す判定区分は次のとおりです。
| 区分 | 名称 | 意味と次の行動 |
|---|---|---|
| A | 異常なし | 次回の健診まで、これまでの生活を続ける。 |
| B | 軽度異常 | ただちに対応を要する段階ではないが、値を記憶しておく。 |
| C | 要再検査・生活改善 | 再検査の時期が示される。生活面の見直しとあわせて確かめる。 |
| D | 要精密検査・治療 | 医療機関で、精密検査を行うか治療を始めるかを判断する。 |
| E | 治療中 | すでに治療を受けている項目。通院を続ける。 |
「要再検査」「要精密検査」「要治療」の違い
この3つは似ていますが、意味が違います。
- 要再検査……同じ検査をもう一度行い、値が本当に高い(低い)のかを確かめる段階です。体調や食事、採血の条件で数値が動く項目もあります。
- 要精密検査……原因を調べるために、別の検査を追加する段階です。同じ検査を繰り返すのではなく、超音波検査や内視鏡検査など、目的に合った検査を選びます。
- 要治療……治療を始めるかどうかを判断する段階です。判断は数値だけでなく、他の危険因子や年齢を含めて行います。
いずれも、その時点で病気が確定したという意味ではありません。ただ、確かめておいたほうがよい項目です。
1回の数値より、経年の変化を見る
1年分の結果だけでは、その値がその方にとって高いのかどうかが判断しにくいことがあります。毎年同じ項目を測り、前年からの動きを見るほうが判断の材料になります。基準範囲の中にとどまっていても、数年かけて上がり続けている項目は注意して見ます。前年の結果票が残っていれば、あわせてお持ちください。
結果票を持ってご相談ください
当院では各種健康診断を予約制で行っています。実施している検査は超音波検査、胃・大腸X線検査、胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査、迅速診断検査、血管年齢測定です。血圧・血糖・脂質・肝機能などの指摘は内科、胃や腸、便の検査の指摘は胃腸科・内視鏡でご相談いただけます。各検査の内容は検査・設備のページ、健診の流れは健康診断のページをご覧ください。
結果の見方についてのご相談も承っています。
参考文献
- 日本臨床検査医学会「『基準範囲』に関わる用語についての検討ワーキンググループの報告書(2019.2.8)」
https://www.jslm.org/about/jslm/20190208.pdf - 日本臨床検査標準協議会 基準範囲共用化委員会「共用基準範囲」
https://www.jccls.org/wp-content/uploads/2020/11/public_20190222.pdf - 日本人間ドック学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2025/12/f5777368d3f9f1c60802063246d4c6ea.pdf - 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001496685.pdf
※本文の数値は上記資料に基づきます。基準値や判定区分は改定されることがあります。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。個々の症状や体質、検査値の意味づけは診察が必要です。気になる点があれば、記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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