心電図と胸部X線。健診で何がわかるか
健診の項目にある心電図と胸部X線検査。どちらも短時間で終わる検査ですが、調べている対象は大きく違います。それぞれ何がわかり、何がわからないのかを知っておくと、結果票の読み方が変わります。
まず結論:得意なことが違い、どちらにも「わからないこと」がある
心電図は心臓の電気的な活動を記録する検査、胸部X線は胸の中の形をうつす検査です。心電図は心臓の動きのリズムや心筋の状態を、胸部X線は心臓の大きさや肺の状態を見ると考えるとわかりやすいと思います。
- どちらも、その検査を受けた「その瞬間」または「その時点」の情報です
- 症状が出ていないときに記録すると、変化をとらえられないことがあります
- 所見があっても、必ず病気があるという意味ではありません
健診で心電図・胸部X線を行う根拠
お勤めの方が受ける定期健康診断の項目は、労働安全衛生規則に定められています。そこには胸部エックス線検査および喀痰検査、心電図検査が含まれています。ただし一律ではなく、医師の判断で省略できる場合があります。胸部エックス線検査は40歳未満で20歳・25歳・30歳・35歳の節目年齢に該当しない方、心電図検査は35歳未満の方および36〜39歳の方が、省略の対象として示されています。
一方、特定健康診査では心電図は「詳細な健診」の項目です。収縮期血圧140mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上の方、または問診等で不整脈が疑われる方について、医師が必要と認めた場合に実施されます。制度の全体像は特定健診・特定保健指導とは何かで扱っています。
心電図でわかること
健診で行うのは、横になった状態で記録する安静時の12誘導心電図です。日本人間ドック学会の心電図健診判定マニュアルでは、この検査から不整脈、心筋の異常、呼吸器疾患の可能性など多様な情報が得られるとされています。また、ST-T異常や異常Q波などがある場合は生命予後の予測指標となると説明されています。
判定に用いられる所見には、Q波の異常、QRS軸の偏位、高い電位、ST部分の低下や上昇、T波の異常、房室伝導障害、心室伝導障害、不整脈(洞性不整脈、期外収縮、心房細動など)、QT間隔の異常などがあります。国立循環器病研究センターは、心電図が心不全の原因となる不整脈の有無や、心筋梗塞・狭心症などの検出に役立ち、心臓の筋肉の障害や肥大が検出されることもあると説明しています。
心電図でわからないこと
安静時心電図には限界もあります。同マニュアルでは、左室肥大の診断精度は特異度は高いが感度は低いとされ、心臓の形態異常を特定するためには心エコーなど別の検査が必要になると明記されています。また、波形は年齢、体形、自律神経の影響で変化するとも指摘されています。
症状が出ているときだけ現れる変化も、安静時の一度の記録ではとらえられないことがあります。国立循環器病研究センターには、症状の起こる頻度が少ない方を対象に、1週間程度心電図記録器を携帯して症状が出たときの記録を取る検査があります。「発作の頻度が少なく、他の検査で記録できなかった症状出現時の心電図を記録する検査」と説明されています。つまり、健診の心電図が正常でも、胸の症状があるときは別に調べる意味があるということです。
胸部X線でわかること・わからないこと
胸部X線検査では、肺の異常な影や、心臓の大きさの変化を見ます。国立循環器病研究センターは、心不全によって体に水分が貯留すると心臓の拡大や肺水腫、胸水などが生じ、胸部レントゲン検査ではこれらを観察することができると説明しています。
一方で、胸部X線は胸を平面にうつす検査です。骨や心臓の陰に重なる部分は見えにくく、小さな病変や、形として現れない変化はとらえにくいという性質があります。詳しく見るためには断面をうつす検査が必要になります。
肺がん検診としての胸部X線検査
国が推奨する肺がん検診は、40歳から1年に1度、胸部X線検査を受けるものです。国立がん研究センターは、放射線被ばくによる健康被害はほとんどないとしています。異常ありと判定された場合の一般的な精密検査は胸部CT検査で、必要に応じて組織や細胞を採取する検査を行い診断します。あわせて、検診には偽陰性・偽陽性・過剰診断・偶発症といった不利益もあると説明されています。
指摘されたときの次のステップ
所見の内容によって、次に行うことは変わります。
- 心電図の所見……再検査で同じ所見が続くかを確かめたうえで、必要に応じて心臓超音波検査、長時間の心電図記録、負荷をかけた心電図などにつなげます。労作性狭心症では、運動負荷心電図や心筋シンチグラフィ、冠動脈CTが用いられ、確定診断には心臓カテーテル検査が不可欠とされています。
- 胸部X線の所見……過去の画像と比べられるかがまず重要です。比較できない場合や変化がある場合は、胸部CT検査などで確かめます。
- いずれも、結果票と可能であれば過去の画像・記録をお持ちいただくと判断がしやすくなります。
胸の痛み、動悸、息切れ、階段で息が上がるといった症状があるときは、健診の時期を待たずにご相談ください。
当院での対応
当院が院内で行っている検査は、超音波検査、胃・大腸X線検査、胃内視鏡検査(極細径ファイバー使用)、大腸内視鏡検査、迅速診断検査、血管年齢測定です。お電話でご確認くださいとしており、この記事は一般的な健診項目の解説としてお読みください。実施していない検査については、適切な医療機関へ紹介状をお作りしてご案内します。
健診で指摘された項目のご相談は内科、胃や腸の検査の指摘は胃腸科・内視鏡で承っています。院内の検査は検査・設備のページ、健診の流れは健康診断のページ、結果票の読み方は健診結果の読み方をご覧ください。
公開前に確認が必要な項目
詳しくはお電話でお問い合わせください。当院が実施していない検査を、実施しているかのように読める記述にならないよう、公開前に本文を確認します。
参考文献
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000194701.pdf - 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001496685.pdf - 日本人間ドック学会「心電図健診判定マニュアル」
https://www.ningen-dock.jp/ningendock/pdf/Electrocardiogram.pdf - 国立循環器病研究センター「心不全」
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/ - 国立循環器病研究センター「労作性狭心症(安定狭心症)」
https://www.ncvc.go.jp/coronary2/disease/stable_angina/index.html - 国立循環器病研究センター「発作時心電図検査」
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/treatment/laboratorymedicine/physiofunction/detail05/ - 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん検診について」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/lung.html
※本文の記載は上記資料に基づきます。健診項目や検診の指針は改定されることがあります。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。個々の症状や体質、検査値の意味づけは診察が必要です。気になる点があれば、記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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