血管年齢と動脈硬化。数値が示していること
「血管年齢が実年齢より高いと言われた」というご相談をいただきます。数字で示されるとわかりやすい一方で、その数値が何を推定したものなのかは、あまり説明されないまま終わることがあります。測定の意味と、結果の受け取り方を整理します。
まず結論:血管年齢は動脈の硬さのめやすで、健康度そのものではない
血管年齢は、動脈の硬さを測り、同年代の値と比べて年齢に換算して示したものです。体全体の健康度を表す指標ではなく、また一度の測定で病気の有無が決まるものでもありません。生活を見直すときの目印として使うのが、現実的な受け取り方です。
- 数値が高めでも、それだけで治療が決まるわけではありません
- 数値が良くても、血圧や血糖、脂質の管理が不要になるわけではありません
- 1回の値より、同じ条件で繰り返し測った推移のほうが参考になります
動脈硬化とは、どのような状態か
厚生労働省 e-ヘルスネットは、動脈硬化を「動脈が硬くなって弾力性が失われた状態。血管壁にプラークがついて血管内が狭くなったことにより、血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなる」と説明しています。
ひとつの状態を指す言葉ではなく、いくつかの型があります。大動脈など比較的太い動脈に粥腫ができる粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)、主に脳や腎臓にある細い動脈が硬くなる細動脈硬化、動脈の中膜にカルシウムが沈着して硬くなる中膜硬化です。進行すると、狭心症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、脳梗塞、脳出血などにつながるとされています。
血管年齢は何を推定しているのか
動脈の硬さを評価する方法として、脈波伝播速度(PWV)や心臓足首血管指数(CAVI)といった指標があります。日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、心拍出によって生ずる脈波伝播速度は動脈の硬化度を反映するとされ、CAVIは大動脈起始部から下肢足首までの動脈全体の弾性能を表す指標と定義されています。いずれも加齢とともに高くなることが知られており、この年代ごとの傾向を使って「年齢」に置き換えて示すのが血管年齢という表現です。
当院が用いているお電話でご確認ください。用いる指標によって数値の意味づけや注意点が異なるため、結果はその場でご説明します。
数値の解釈で気をつけたいこと
同ガイドラインは、これらの検査の限界も示しています。脈波伝播速度は動脈の硬さの指標であり、必ずしも粥状硬化を反映しないとされ、上腕足首間の脈波伝播速度(baPWV)は測定時の血圧の影響を受けることに注意が必要とされています。CAVIは測定時の血圧による影響が少ないことが特徴として挙げられています。
また、体型、血圧値、不整脈などでも数値が変化する可能性が指摘されています。緊張して血圧が上がっている状態で測れば、値も変わりえます。だからこそ、同じ条件で測り、推移を見ることに意味があります。なお、頸動脈超音波検査で調べる内膜・中膜の厚さ(IMT)は全身の動脈硬化の程度の反映や発症リスク予測の代替指標とされ、足関節上腕血圧比(ABI)は下肢の閉塞性病変を疑うときの基本の指標とされています。血管年齢の測定は、こうした複数の検査のひとつという位置づけです。
動脈硬化の危険因子
e-ヘルスネットは、動脈硬化の危険因子として加齢・喫煙・脂質異常症・高血圧・飲酒・糖尿病を挙げています。また虚血性心疾患の3大危険因子は喫煙・脂質異常症(LDLコレステロールの高値)・高血圧であり、メタボリックシンドロームも危険因子のひとつとされています。
加齢のように変えられないものと、生活で変えられるものがあります。血管年齢の数値を下げること自体を目標にするのではなく、変えられる危険因子を減らすことが目的になります。血圧が高めと言われた場合の考え方は健診で「血圧が高め」と言われたらで扱っています。
生活で見直せること
- 血圧・血糖・脂質の数値を、健診や通院のたびに記録して推移を追う
- 喫煙している場合は、禁煙の相談をする
- 飲酒量を見直す
- 体重と腹囲を、無理のない範囲で管理する
- すでに治療中の項目は、自己判断で中断しない
どれも目新しいことではありませんが、危険因子を一つずつ減らしていくことが、遠回りに見えて確実な方法です。
当院での血管年齢測定
当院では血管年齢測定を院内で行っています。あわせて超音波検査、胃・大腸X線検査、胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査、迅速診断検査を院内で実施しています。各検査の内容は検査・設備のページでご紹介しています。
高血圧・糖尿病・脂質異常症の継続的な管理は内科、脂肪肝など肝臓の指摘は胃腸科・内視鏡で承っています。健診とあわせてのご相談は健康診断のページ、結果票の読み方は健診結果の読み方をご覧ください。
参考文献
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」第1章 動脈硬化の臨床診断
https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/01.pdf - 厚生労働省 e-ヘルスネット「動脈硬化」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-082.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-005.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドローム(メタボ)とは?」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-01-001.html
※本文の記載は上記資料に基づきます。ガイドラインは改訂されることがあります。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。個々の症状や体質、検査値の意味づけは診察が必要です。気になる点があれば、記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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