高齢者の肺炎球菌ワクチン。定期接種の対象と考え方
「肺炎の予防接種は受けたほうがよいのか」「5年ごとに受けるものだと聞いた」。高齢者の肺炎球菌ワクチンはこの数年で制度が動いており、以前の説明が当てはまらない部分があります。現時点の公表内容をもとに整理します。
まず結論:65歳になる年が、定期接種の機会
高齢者の肺炎球菌ワクチンは、予防接種法に基づく定期接種として実施されています。厚生労働省の案内では、対象は65歳の方、および60〜64歳で一定の基礎疾患がある方で、接種は1回とされています。65歳を過ぎると定期接種の対象から外れるため、通知が届いたら早めにご検討ください。
制度改正についてのご注意
制度改正により、対象・回数・使用するワクチン・費用が変更される場合があります。本記事は2026年7月時点の公表内容に基づきます。必ず土浦市から届く通知と医療機関でご確認ください。肺炎球菌が起こす病気
肺炎球菌は、のどや鼻の奥にいることがある細菌です。厚生労働省は、この菌によって気管支炎、肺炎、敗血症などの重い合併症を起こすことがあると説明しています。加齢や持病で体の抵抗力が落ちると、重い経過をとりやすくなります。
ワクチンは、肺炎球菌のうち「血清型」と呼ばれるタイプの一部に対して免疫をつけるものです。肺炎の原因は肺炎球菌以外にも多数あり、接種を受けても肺炎にならないというものではありません。禁煙、口腔のケア、持病の管理といった対策とあわせて考えるものです。
定期接種の対象と、B類疾病という位置づけ
厚生労働省が示す定期接種の対象は次のとおりです。
| 対象 | 要件 | 回数 |
|---|---|---|
| 65歳の方 | 年齢の要件のみ | 1回 |
| 60〜64歳の方 | 心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活が極度に制限される方/ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方 | 1回 |
予防接種法では、定期接種の対象疾病がA類とB類に分けられています。高齢者の肺炎球菌感染症はB類疾病で、「個人の発病又はその重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資すること」を目的とする区分です。A類と異なり接種の努力義務や勧奨はなく、受けるかどうかはご本人の判断になります。費用の一部に公費負担がある場合があるとされています。
使用されるワクチンは移行期にあります
厚生労働省の予防接種のページでは、2026年4月から、定期接種で使用するワクチンが沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変更され、従来の23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)は定期接種としては使用しないとされています。日本呼吸器学会の「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版)」も同じ内容を記載しています。接種は1回、筋肉内に行うとされています。
ただし案内によって記載が異なる時期にあたります。使用されるワクチンは土浦市の通知と医療機関でご確認ください。
23価ワクチンと結合型ワクチンの違い
大きく2つの系統があります。莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、23価)と、結合型ワクチン(PCV13・PCV15・PCV20・PCV21など)です。数字は含まれる血清型の数を表します。
結合型ワクチンは、菌の成分をたんぱくと結合させることで免疫の記憶が得られやすいと考えられています。日本呼吸器学会の文書でも、結合型ワクチンの接種によって血清型に特異的なメモリーB細胞が誘導されると説明されています。含まれる血清型の数だけでなく、免疫のつきかたが異なる点が特徴です。
効果の持続と再接種の考え方
日本呼吸器学会の文書では、PCV20およびPCV21接種後のワクチン効果の持続は5年程度と考えられ、免疫原性の観点からは接種後5年以降の再接種が必要と考えられるとされています。一方でPPSV23の再接種は原則として選択肢としないとも記載されています。「5年ごとに受けるもの」という以前の理解は、そのまま当てはまりません。
また、PPSV23もしくはPCVを既に接種した方は定期接種の対象外となり、PPSV23あるいはPCV13/PCV15/PCV20の接種後1年以上の間隔を置いてPCV20あるいはPCV21を接種することができる、とされています。これらは学会の「考え方」として示されたもので、定期接種の枠組みとは別に判断される部分があります。過去の接種歴で判断が変わりますので、接種済証をお持ちのうえご相談ください。
副反応と、事前にお伝えいただきたいこと
厚生労働省が示している主な副反応の頻度は、注射部位の疼痛・圧痛59.6%、筋肉痛38.2%、疲労30.3%、頭痛21.7%、関節痛11.6%です。多くは数日のうちに落ち着くとされていますが、症状が強い場合や長く続く場合はご連絡ください。まれに重いアレルギー反応が起こることが知られています。
接種前に医師に相談が必要な方として、免疫の機能が低下している方、心臓・腎臓・肝臓・呼吸器などの病気で治療中の方、過去にアレルギー反応を起こした方、けいれんの既往がある方、血液が固まりにくい方などが挙げられています。問診票と診察で必ずお申し出ください。
費用・助成と、当院でのご相談
定期接種として受ける場合の自己負担額は市町村ごとに定められています。
当院では各種予防接種に対応しています。取り寄せが必要な場合がありますので、事前にお電話(029-862-4668)でご相談ください。予防接種、内科、健康診断の各ページ、初めての方へもご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省「高齢者の肺炎球菌ワクチン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/pneumococcus-senior/index.html - 厚生労働省「肺炎球菌感染症(高齢者)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html - 厚生労働省「予防接種法における接種類型と公的関与について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001107265.pdf - 日本呼吸器学会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版 2026年4月1日)」
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/65yrs_vaccine_ver8_20260401u.pdf - 土浦市「予防接種」
https://www.city.tsuchiura.lg.jp/kenko-fukushi-iryo/kenko-iryo/yobosesshu/
本文中の対象・回数・数値は上記資料の公表内容に基づいています(2026年7月時点)。制度は改正されうるため、最新の情報を必ずご確認ください。
この記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。接種の可否や過去の接種歴をふまえた判断は診察が必要です。記事の内容だけで判断せず、当院またはかかりつけの医療機関にご相談ください。帯状疱疹ワクチン。2種類のワクチンの違い、インフルエンザ予防接種、受けるベストな時期はいつ?もあわせてご覧ください。
医療法人 新治診療所 院長。日本消化器病学会 専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医。茨城県土浦市下坂田で、内科・小児科・胃腸科の診療にあたっています。わかりやすい説明を心がけ、地域のかかりつけ医として健康維持をお手伝いしています。
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